当社設計の標準仕様/デザイン
- 2024.03.22
- BLOG
ホームページリニューアルを前に整理してみました。
大きな方針としては「30年後に本当に良かったと言っていただける」質を目指します。
そのために大切な「素材」「デザイン」「性能」について。
■素材■
<木材>まず木造住宅においては適切に木構造を見せ、仕上げ材も含め、杉赤身、芯去材、柾目などにこだわります。耐久性も上がり、節も出来るだけ少ない、和食で言えば「灰汁抜き」をしっかりした木材です。
<壁材>内外とも基本は左官塗り壁とする理由は、世の中の壁材の多くは塗料や樹脂でできており、それらは劣化し定期的な塗り直しによる大きな出費が必要となるのに対し、それらが不要とできるから。
また古いお寺でも漆喰の壁は古く煤けてきてもそれがむしろ味わいになるという、自然素材の力だから。
■デザイン■
引き算の美学、というと言い古された言い方ですが、和食も同じく、やはり良い素材を厳選しその素材を毎日味わっても飽きないようなあり方、というのは、本当に大切なもの以外を引き算することです。
「恣意的」というのは「ちょっと面白く見せてやろうか」という心ですがそれは楽しげな店舗設計には必要でも、何十年も住み続ける住宅には害でしかないと思っています。
でもその引き算を研ぎ澄まし「洗練」させた先には、決して凡庸ではないオーラが立ち現れると考えます。
ただそれは素材から逃げたシンプルな白い箱の「ミニマル」とは全く違います。
木材という素材の良さを引き出すためにも「陰影」を適切にデザインします。
■性能■
現状「長期優良住宅」を標準仕様として断熱性、耐震性などを確保し、補助金を受けられます。
浜松エリアは温暖なのでそれを最優先する必要はないと思いつつ、庭に対して大きな窓を作り日々季節を感じた暮らしをするためにも必要な性能かと思います。
本当の耐震性というのは等級の数字だけでなく、設計として本当に力の流れを考えながらプランやデザインをしているかによって大きく変わります。すっきり見える平面、外観であることで薄い卵の殻が強いような、合理的な強度が実現できると考えます。
■施工者選定■
当社では基本的に設計がまとまりましたら複数者の信頼できる施工会社に見積を依頼し、出来るだけ安くやっていただける会社を選定することにより、ご予算内でできる限り良いものを実現できると考えています。施工というのは半分以上は人件費なので、監督さん、大工さんなど、忙しいとついつい高い見積もりになり少し暇で積極的な受注を目指す時には結構安い提示をもらえるため、その時々に競争してもらうようにしています。設計図はとても細かく指示をするため、安い見積が出ても品質が落ちる事はありません。
また厚い見積書を細かくチェックし、金額の交渉もプロとして行うことにより金額を抑えることができ、それも設計事務所の価値だと考えます。
結果、日々の暮らしや季節の訪れが楽しく、長く愛着が持てる住まいとなることを願います。
次に各部分の具体的な設計、こだわりについて
■ガレージ屋根■
インナーガレージは費用も高いですが、このように建物とデザインや構造を合わせた屋根だけのガレージは費用も抑えやすく、雨の日、夏の暑い日など便利ですし車も長持ちすると思います。間違っても後で既製品カーポートは格好悪いですしちょっとデザインの良いものは結構高いので、このように作ってしまった方が良いです。またこのようにオープンな屋根なら天井をムクの木材とする方法もあり、アプローチの目立つ場所にあるものなので、デザイン的にも良いものができます。
■玄関まわり■
制作の引戸の木製建具。取手や右のインターホン、ポスト口を組み込んだ表札もオリジナル。ランマガラスとすることで閉めても玄関は明るく、夜内部の光が漏れるととても綺麗です。それぞれ既製品だとデザインに限界があり、良いものだとすごく高いので、丁寧に設計してこのように作り込みます。
■ウッドデッキと窓■
デッキ材は厚い材を下からビス止めする事で上にはビスは出ず、見た目やそこから痛みやすいので耐久性も上がります。杉の赤みを使えば高い外材や樹脂が混ざった紛い物を使わなくてもかなり耐久性はあります。デッキ下の受け方も当社のオリジナルで、スッキリ見せるために考えたやり方です。
■杉板の板塀■
2010年に完成した自宅件事務所から使い始めたやり方で、耐久性と強度が必要な支柱はアルミとして、板を交互に張ることで両面ともアルミ柱が隠れ、少し編んだ感じになって光や風が少し漏れ、とても感じが良くなります。たまに長い板を無理に波型に曲げている方法がありますがあれは施工もすごく大変で見た目も、、です。特許を取っても良いくらいのものだと思ってますが取ってませんが、建物の雰囲気が違うと合わないと思います。
■内部引戸■
もちろん基本は引戸で枠や戸先は杉ムクで、手掛溝を通して掘ることで金物の引手がないので、ぱっと見壁に見えるのがミソです。
公共施設でななく住宅なので、それが「戸」であるように見える必要はありません。また欄間ガラスとして視線が通ることで天井のデザインが引き立ちます。
■浴室■
壁タイル仕様などバリエーションはありますが、石、浴槽、引戸など、それぞれ詳細にデザインする事で、高級旅館に負けないお風呂ができます。
高級なユニットバスくらいの金額があれば作れますし、ユニットバスと違って部分的な交換もできたり、自然素材で作ってあるので、長く使ってもらえますしむしろ安くつく上、毎日気持ちよく疲れを癒すことができます。
■洗面室■
洗面台も基本は詳細に設計して作り込みますので、ご要望をお聞きしながらいろんなタイプのものを作ります。
この画像のは鏡部分をスライドすると中が収納になっている、というちょっと特殊なものを考えました。あえてそっけないデザインや色にすることで、無駄に主張をしない清潔感のあるデザインとしています。
■天井■
2023年以降「竿縁」という細い角材を並べた天井を作ってますが、昔の日本建築のそれとは目指すところは全く違います。
天井って物で埋まることがないので室内外、部屋同士でも繋げてゆくと視線が広がり、平坦な単純な天井でなく、綺麗な木目や陰影があることで、いつまでも眺めていられるような天井が出来上がります。
天井板を乗せることで、地震で落ちてくるようなこともなく、竿縁は天井内で梁や垂木としっかり接合することで、軒先や建物全体の強度を上げる役割も担っています。
私の自宅や事務所、以前の設計は勾配の天井に化粧の垂木、という構成が多く、もちろんそれも良いのですが、「勾配」は少しクセがあり、垂木や梁を見せると重力を感じさせるというか、ちょっと重たい印象になってしまいます。それに比べると少し物足りない感はありますが、美味しい白米というか毎日食べても飽きない感じというか、更なる「洗練」を図るために考え出した方法で、他の誰もやっていないはずです。
以上、最近よく使うパターンとして紹介しましたが、それぞれ設計をして作っているので、他の素材や形など、どんなものでも対応ができますし、今後も新しい試みも積極的にしながら、より良いものを作ってゆきます。