Who Gets What

  • 2016.06.07
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副題「マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学」何故か読もうと思いましたが、普段設計の依頼を頂いている方々からは本当に良いマッチングを頂いているなあ〜と思う一方で、まだ出会いもしない方々の中にもまだまだいらっしゃるはず?なのに出会わないで終わらない方法はないのか?という疑問に何か返事が貰えないかと読んでみたのでした。

「厚みのある市場」が理想的であり、そこでは人と人、人とモノが、一番良い組合せで結びつく。と簡単に書けばそうだけど、例えば結婚(もある種の市場)について考えれば、そんな理想的な事が実現可能なはずがない、と思うくらい簡単ではないですが、でも高校入試や面接試験などでその理想に少しでも近づくべく様々な努力はなされていて、著者はその世界で活躍し、ノーベル経済学賞までもらっているんだから、私たちの知らないところで理論が私たちの幸せに寄与しているようです。

また、そんな理想に近づくためには、まず選ぶ側、選ばれる側それぞれにお互いの情報が行き届き、お互いの希望が遠慮なく伝えられる環境があり、どちらもが対等である必要があり、その上で公正かつ効果的なルールによってマッチングが行われる事で初めてそれが実現できるようで、例えば医学生と研修医を求める病院側、という市場ではそんな環境とルールの中でより良い結果を生んで来ているようですが、自分が高校や大学や企業に入る時にそんな環境があったかと言えばほぼNoでしょうし、世の中のほとんどでは、学校や企業など選ぶ側(巨大な側)の都合で若者達を機械的に選別しているようにみえます。また、本書でも書かれていますが、「コモディティ(買い回り品とか訳されます)」つまり匿名性の高い、誰がどのようにつくっているか良く分らないものを片方の極に、他方に昔流行った?言い方で言えば「オンリーワン」的な市場をもう一方の極にして、そのどこか中間にどの市場も位置づけられるのですが、医師も学生も結婚も、もちろんオンリーワンな人なのですからコモディティ市場とは全く違って扱われるべきだと思うのに、例えば住宅もそうですが、あたかもコモディティのように宣伝され、買われている、というのが問題をつくっている大きな原因かもしれません。

さて、私の興味の中心の、住宅を建てたい方がそんな理想なマッチングを得られるか?という事について、本書では一切触れているわけではないですが、HMなど大企業側に都合の良い情報ばかりが流れ、その中で本当に大切なものを見つけようという意志さえ失われ、場合によっては土地を選べば業者まで決まってしまい、建築の事など分からない感じの良い一生懸命な営業担当に情が移って依頼先を決めてしまう、なんていう全く持って薄っぺらい市場というか市場でさえないのかもしれません。そして、そんな市場では本当に質を良くしようという努力より、どうやって売るかしか考えなくなりがちですから、やっぱり市場は厚みをもち、お互いの質が上がるような努力をするような環境を作る事が、全体を幸せにするのではないかと思います。

まあこんな負け犬の遠吠えは時間の無駄ですが、昨夜もこのWebをつくってくれた夫妻が誕生祝い?に美味しいお酒を持って来てくれて、飲みながらそんな話もしましたが、小さな風穴でも良いからそのうち開けたいな、と諦めずにいたいと思っています。