長谷守保 建築計画

N by 青木淳さん



月刊誌「新建築の巻頭のものについて書く2月目です(月一なので、続かなければ三月坊主?)
先月講演会にも来られた青木淳さんの住宅「N」です。
名前の付け方がアルファベットで(つまり26しかないですが、余り沢山つくらないので心配ないのか?)、余りテーマ性のある名前などを付ける事によって、ある固定化した見られ方をされたくないようで、アルファベットの中から相応しそうなものを毎回選んでられるそうです。
講演会の中でも出ていましたので、予備知識はありましたが、まずは、新建築の住宅特集の方ではなく、新建築の、それも巻頭に住宅が出るというのは、少し珍しいことです。もちろん、住宅を住宅としてではなく、建築と連続したものとしてつくられているというスタンスがあるからですね。
青木さんは(51才?)建築を、社会、都市や歴史と関連づけ、高いところから論じていた建築家たちの最後の世代にあたり、逆に、そのスタンスには反発していて、ヒエラルキーや、統制する原理、構成がないような、意味が不安定に存在する中で、読む側が自由に意味を発見できればいいと考えられているようです。
その意味において、このNの敷地はニュータウンにあり、それは、とても上記のような原理構成でできていて、ある意味を押し付けるような環境にあり、その中で、全くゼロから違うものをつくるのではなく、わずかな意味の変化で、大きな変化をつくろうとして、ありきたりの「家型」なんだけど、よくみると、ただ白い建築模型を拡大したような、アンリアルな、その辺りの住宅が発している、ありきたりな意味を発しないような作り方を意識的にしています。
「意味」というのは、みなさん当たり前のように、思い込んでいることが沢山ありますが、実は、そう思わされているだけで、実は根拠が変われば意味も変わったりなくなったりすることばかりです。例えば「貨幣」なんかは、貨幣社会でないところにもっていっても単なる金属だし、国家か転覆してしまってもクズになってしまうかもしれない。また、住宅なんてのも、家族の幸せの象徴のように思わされている面がありますが、かなりつくられたイメージでもあります。
そんな、ニュータウンのように、つくられた街に、ハウスメーカーの住宅を建てて一生ローンを背負って住む。それはつくられたレールに乗ることですし、そこには、ある種の安心感のある
「意味」があるわけですが、それは決して間違いのない意味ではなく、国家と、住宅産業がつくりあげてきた(受験社会のように)ひとつのイメージにしかすぎません。
青木さんが「僕たちが暗黙のうちに建築と捉えていることの外に、まだまだ未知の建築のあり方がきっとあるのだと思います」と言うように、お膳立てされたものに乗るのは楽だし安心ですが、その枠を超えた、楽しみも気持ち良さも感じることはできません。
ただ、実際Nの写真を見ても、言いたい事は分かるけど、ここまでやらなくても、と感じるかもしれません、でも、僕は僕がやっている事と、青木さんが目指されていることは「地続き」だと感じていますし、青木さんもそう言ってくださってました。
それはそこまで大胆な事でなくても、ちょっとした素材の選び方、細かな寸法の選び方、プランのつくりかた、などで、カタログから選ぶような作り方ではなく、この空間は、この形は、こうだったら気持ちいいだろうな、と気づき、それを実現しようとするなかで実践できることだと思います。

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On 12月 9, 2007
by hase
in けんちくーよむ

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