総裁選ー強靭化ー貧富の差
- 2021.09.22
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総裁選で賑やかな中、高市さんが継承するという安倍さんがやろうとしていたことの始まりとも言える?藤井さんの論をざっと読み返してみました。
当時はどうもこの「強靭化」という発想が嫌いで、なぜかというと僕も建設の業界にずっといる中で、良いものを長く使うために、という発想がないのにとりあえず作り続けられるものが余りにも多かったために、いくら大震災からの復興という大義があってもただそれに乗っかって、価値のないものを量産するだけじゃないか、と思っていました。そして実際、その延長線上で例の防潮堤も出来たわけですが、海をただ恐ろしいものとして遠ざけたようなやり方が、国としての「強靭化」なのか?という疑念がただ大きくなっただけの結末になってしまったし、そのようのことが全国で行われてしまっていると思います。もちろん一方で、必要な施設が良い形で作られた例も沢山あるはずですが。
ただ、具体的に何を作るかという話の前の、本書で描かれたような思想というものは否定されるべきはないと思うのと、「デフレ不況を解決」という表現が示す、いわゆる財政規律、プライマリーバランス目標、というものがデフレ不況を継続、悪化させているという主張については、しばらく前からそうだなあ〜と思い直しました。(それまでは将来に禍根を残さないように財政規律は必要だと、上記のような無駄な公共事業を肌で感じながら思っていました)
藤井さん達の受け売りにしか過ぎませんがMMT(現代貨幣理論)が主張するように、日本のように自国通貨を発行できるなら、財政赤字でも国はインフレが起きない範囲で支出を行うべきで、財政規律によってそれをしてこなかった日本が長期デフレによって成長をしていない一方、日本のように高齢化が進む先進国達は一定の成長をしていて、数十年前の日本の地位はとても落ちてしまっている。もし消費税増税をしていなければ(財政規律など言わず)ほかの先進国並みの成長をしていて、その過程での借金など吹き飛んで(言い過ぎだが)いた。というのは、どうも客観的に正しいように、今のところ思っています。そして一方では様々な自由化?をしたりして富裕層がますます儲かり、デフレも相まり貧富の差がますます拡大したのは、どう考えても国策の失敗でしかない。コロナで自粛させてもお金出さなかったのは多分根っこにある財政規律のせいじゃないかと思うけど国民を見捨てるようなやり方は国家とは呼べないですよね。。
でも日本は財務省がとても強く、PB目標に固執していて、国土強靭化を掲げた安倍さんでさえ?もやりきれなかったけど、高市さんはそれをやる、と言っているのはとても興味深いですね。
ただ、本当はそのためには公共事業などではなく、消費税減税、もしくは消費税を凍結することで直接的に消費を喚起した方が良いと思うけど、高市さんも消費税には触らないと言っていたのは残念だし、ただ国土強靭化の旗の元に、公共事業が増えるようなやり方になるなら、それは僕は違うとは思う。そして、むしろ問題は、様々な自由化を通じて、弱肉強食の世界に拍車をかけて、庶民は100均、ユニクロで生活を満たせば良い、という環境の結果、物価が上がっていないのだと思うから、格差を小さくして、庶民も良いものを大切に使い、自らもその生産に携わることで収入も増える、という循環を作るべきなのだと信じます。
個人的には本来、「お金」に固執した世の中じゃない世界(世界の国の中にはそれで幸せなところもあるようですから)になれば、低成長というか、そもそも成長なんてしなくて良いし、環境問題も起きないし、ストレスも自殺も減ると思うんだけど、今の日本はもうお金の亡者に支配されてしまっているので、今更そういうわけにいかない、という諦めをベースとするならば、やっぱり本書でいう強靭化の思想というのは持つべきだと思いました。
ただでも、やっぱり公共事業のあり方は、「質」を高めて、愛されて長持ちするような施設や設備を丁寧に作るべきだから、「入札」も必要だけど設計の質を問うようなやり方を、ほんの少しずつでも増やしてもらえば、設計者も必ず努力をするし、面白おかしい流行りの形を褒め合うような建築家、という存在も淘汰されてくるんじゃないかと思います。
僕らは総理は選べないから、票を持つ方々の「良心」を信じることにしましょう。