逝きし世の面影
- 2015.01.04
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開国後明治維新のころに日本に来た外国人が残した文章などからその当時の人々の姿を垣間見るというのはそれなりに見聞してきて、漠然と、根本的な価値観の違いはあれど、少なくとも今の私たちが彼らより幸せという事はない、と思っていた事を裏付けてもらったような感じです。本当に名著だと思いますが特に今の自分や世の中に何か違和感を感じられている方であればとても興味深いでしょう。
また、ここ数年思っている事で、今でこそ西洋的な考え方、つまり個人というものが独立して存在し、夫々が理性を持ち、彼らが集まって力を合わせることでどんな事でも解決できる、思ってしまっているかもしれないけれど、人間だって元は猿ですし、今の猿を見れば分かるように、個性らしいものや上下関係やある種の技術の伝承は見られるにせよ(キリスト教、進化論の奴らですからYesとは言いませんが)それと今の我々が実はつながっているんだし、いきなり変化した訳じゃないから中間段階があるはずで、アジアは島の人々は西洋人に出あうまではむしろその猿に近い意識だったんじゃないか、という考えも強化されたように思います。
当時の人々の素描です。
・混浴や人前での行水など当たり前で、外国人からは恥がないのか?と思われたようですが、猿なら当然ですよねw
・みんな貧しくともとても幸せそう。これも猿はきっと貧しくて悲しそうにはしないでしょう。
・外国人が日本語が分からないという事が分からない。外国人を怖がらない。
・お互い言い争わない。もちろん猿もですが時には力関係のために争うでしょうけど普段は仲良しでしょうね。
・子供が泣かない。兄姉がおんぶして遊ぶ。泣き叫ぶのは人間くらいですよね。
・大人でも出産時や災害時に叫んだりわめいたりしない。叫ぶのは誰かに助けて欲しいという意識でしょうし、それは自我意識があるからじゃ?
・犬猫や馬にもとても優しい。飼いならそうとしなかったそうですが、だいたい飼いならすという意識自体が人間中心主義ですよね。
・夫婦でも愛によって結びついていない。猿にも愛なんてないでしょうね?
こう見て来ると、どう考えても当時の日本人は西洋人より猿に近いんじゃと思いますがいかが?
かと言って彼らも言っていたようですが、文化や美意識や楽しく生きるというレベルにおいては間違いなく西洋に負けないものを持っていたわけですが、その理由の一端として、例えば硯箱しか売っていない店など、とても特化したものを作りながらそれだけを売ったりしていて、それもとても美しいけれどとても安かったので皆が平気で使っていたそうで、だからこそ全体の美意識が高いという好循環が生まれたのでしょう。またおそらくその職も親からとかきちんと技が受け継がれて来たから質が上がる事はあっても下がる事はなかったんでしょうね。一方の現代は家電メーカーひとつとっても何でも屋だししまいには住宅まで作り始める始末。どれもこれもやれば質は下がるだけですよね。という意味ではやっぱり自分が丁寧に作れる範囲で丁寧に作る、という事が何より大事だと思います。
上記の猿に近い、だけじゃなく文化レベルがとても高かった理由は、まあ良く言われる島国で鎖国していて、あとは食べ物にも比較的困らず、というある種の安心感の中で育まれたのと、上で触れた特異な風習というのは、喩えてみれば、宇宙船に、ある限られた人数がのって何百年、千年ともし、新たな世代を生みながら生活を続けたら、と考えると、やっぱり個性や自分の幸せや、というのではなくみんながいかに笑顔で居られるか、というルールをいつのまにか暗黙の中で身に付けるんじゃないか?それが日本人が持っていた美徳でもあり、逆にいうと今でも残っている気質として主張や議論や決定ができないというか避ける傾向にある、とも言えるかとも思いました。
また、猿みたいなのに何でそんな高い文明を持てたのか?と思われるでしょうけれど、おそらくピラミッドや古代文明もそれに似た状況だったと思っていますし、指導的立場な人間もいないとできなかったでしょうけれど、それは単に女王蜂と働き蜂の役割分担の違いという事で何かに秀でた固体がその役割を担う事でとても高いレベルの事を成し遂げたというのはあり得る話だと思っています。
もちろん著者も懐古として書いた訳じゃないですが、今の諸問題の根っこを把握してより良く変えてゆくためにも、私たちがどんな所に居たかは知っておくべきですし、そうする事によって初めて見えて来る事があるはずだと思います。
そして個人的には、そんな「個」がない時代の方がより美しいものが生まれたという事の大きさをきちんと受け止めてみて、個人の思いつきや論理や理性でものをつくる限界と、やっぱり私たち人間も所詮自然の中の一つの部分として生かされているだけなのだ、という事を再認識しつつ、素直に良いと感じられるものを、ただ素直につくるしかないな〜と思っています。
あ、最後に、本年もよろしくお願い致します。