神々の沈黙

  • 2014.05.07
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たまたま書評を見かけ、これは自分が漠然と思っていた事に答えてくれそうだ!という予感がして大著ですがGW中半分潰して読みましたが、学術的に言うと異端で大胆な説ですが読んでみると納得します。

僕たちは、「意識」を持ち、それに基づいて生きていて、多分それは少なくとも石器なんてつくっていた頃には持っていたと考えるとすると200万年も前なのだけど、著者ジュリアンジェインズはそれは高々三千年前に芽生え、現代までにかけて徐々に大きくなってきたと主張したので「20世紀最大の議論を呼んだ話題作」なんて帯がついてます。

そんな事言ったらピラミッドは4500年前とかに作られているが、つまりあれは、蜂が巨大な巣を作るように、個々人には意識はない状態で作られたという事で、驚くべきかもしれないけれど、良く考えれば車の運転中でもずっと意識していなくても走ってしまっているように、無意識の指令で体が動くという事はあるのだし、言語を司る左脳に対して右脳が余り使われていないように見えるのは、以前は右脳が無意識の指令(それが神々と呼ぶもの)を出していて、それに左脳が従い、「二分心」と著者が名付ける状態でずっと生きて来たということで、その指令の名残が今少数な人間が聞く「幻聴」だったり、それに似た状況が催眠術をかけられたり宗教的に強く囚われた状態だし、その方が力作業も不平も言わずやるだろうし、だからあんな巨大なピラミッドが作る事ができたのだ、と考えることもできる。

その文脈では、古代文明が突如消えたのは、人々に急に意識が発生して、つまり今まで夢の中で巨大な構築物など作って来たけど目が覚めたら今まで何やってたんだろ?という事になって人々が散り散りになってしまった、と考えると確かに辻褄もあう。またギリシャ神話や聖書の古いものを良く読むと、例えば「感情」とか個人の「判断」みたいなものは一切表現されておらず、たとえばルンバがプログラムに応じて自由に動き回っているように見えるのを、ただビデオカメラが記録しているといった風にしか読めないけれど、時代が立つに連れて、そこに意識の芽生えが明らかに見て取れるというのだ。

また何故その神々の声が消えていったかは文字や言葉ができて世の中が乱れたり複雑になり、恐らくその神々の声は、動物が経験によって危険な敵を覚えてゆくように、それほど複雑な事には対応できないから、徐々に神々の声が聞こえなくなる代わりに意識が勝って来た(これは僕なりの勝手なまとめ)という事だろうと思う。同じように、キリスト教なども、最初は神を妄信するような感じから、自らが考え、従う、というような内容に変わって来たらしい事も合致すると言える。

まあ、大著だけど結構読み飛ばさなくても楽しめる、つまり面白いネタが沢山あったのでこれ以上キリがないですが、さて、僕は何を思ったかと言いますと、、
人間の意識や知恵やなんやと、偉そうな事を言っても、多分きっと、最初は動物として少しでも生きて子孫を残す、という大目的のために、結構自由の効くシステムがそれぞれの動物にセットされていいて、動物も育つ環境が違えばエサも敵も違っても経験する事で、それに適した指令が発せられるようになるから生きていけるのと同じことが「神々の声」だっただけなんじゃないかという事ですが、「だけ」というと軽いですが、裏を返すと全てはそこにしかない!という事だと考えると所詮意識の世界なんて砂上の楼閣のようなものなんだ、というまあまた仏教的な方向性につながってしまったりもしますw

音楽や芸術は右脳につながっていると言いますし、何故俳句が五七五なんてリズムをとるかも、多分そうでないと左脳に入ってしまって心の深くに届かないから、つまり人間を奥から動かすのは右脳であって、神なき今、芸術(や宗教も?)それを行っていると考えるべきじゃないか、というのが僕の中の大きな成果でした。

追記

いつもバタバタと書くのでいけませんね。。意識」の世界は「地図」に喩えられていましたが、つまり、意識を持った状態は地図を持った状態。ここに進めばこれがあると見通せる状態。一方の意識以前は、地図を持たない、つまり目先の前後左右動くにも何も根拠も判断能力も無い状態、だから本能やら神々の声に頼る必要がある。と考えると少し分かり易いかなと。あと、deep/深い、clear/明るい、って物理的な状態を示すと同時に洞察が深い、とか明白だ、とか状況を示すのに英語と日本語でも何故か似ている事がとても沢山ありますが、また神話も世界であっても構造がどこか似ている(乱暴者と立派な神等が共存するなど)というのも、意識の世界が現れてからつくったのではこんなに似るはずが無い(恣意性が入るから)とするとやはり意識以前の状況で生まれたと考えるべきですよね。と補足でした。