磯崎新 Interviews/日埜直彦

  • 2014.12.10
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日埜くんは実は同じ研究室で苗字も近いからか、卒論の発表等のとき隣の席で、僕の拙い話を聞きながら、そうなの?みたいにからかわれた記憶があるが(彼は忘れてるだろうw)まあ僕の大学時代は、今思えば、ぬるま湯な感じだったけど、彼と出会った事だけはその後の僕に大きな影響を与えてくれています。

何しろ、大学入った頃からドゥールーズ読んできちんと咀嚼してたし、何故そんなに読めるの?と思ったものだけど、磯崎さんも若かりし頃、とんでもなく仕事が忙しいのに夜中にラテン語(だったか?)の書を読んでいたらしいけど、素直な知識欲なんだろうか?僕は無理して読んでる面があるから難しかったりすると睡魔が邪魔してしまう。今まで、同世代で、どう努力しても追いつけないと思わされたのは彼くらいだけど、まあそういう出会いがあって、今の自分があるから感謝しなければ。
磯崎さんは難しすぎて、かつての建築家たちを混乱させ、今ではちょっと忘れられようとされてしまっているような気もするけど、モダンに対するのと同じように、一度はきちんと向き合って乗り越えないといけないんだと思います。学園闘争の時代があったけど、結局敗者は語らず、みたいな感じで僕らには何も伝わって来ないけれど、それがないから、集団的自衛権に僕らが向き合い、議論ができなくなってしまっているのと似た構造にも思えます。
ただ、磯崎さんの書はそれなりに持っていて読んで来ましたが、何故そんな分かりにくくしちゃうの?と感じてしまうけれど、本書を読んで見えてくるのは、磯崎さんもその時その時で手探りで全力疾走しながら記したものだから自分でさえどこに向かうか分からない状況だったようだし、でもそれが振り返ればある軌跡を描いて来ている、というのを、日埜くんが上手にまとめています。

特に磯崎さんの建築に対する認識についてなるほど、という部分を。

・いかなるプロセスも切れ目がない。持続であり、流転である。始まりも無ければ終わりもなく、明確な形をなさぬままにその姿は転変し、不定形なままにダイナミックな運動を続ける。その運動を分節して扱い易いように仕立てる近代主義の手法は所詮このまとまりのなさを覆い隠す弥縫策に過ぎない。
・プロセスの運動を切断するのは、便宜的なものであり、あるいは非論理的な決断である。そして建築はその切断にによりはじめてその姿を定める。その切断の主体が建築家と呼ばれる。建築家は調停者というよりは、事態を切断し、そこに非連続性を刻むことで、プロセスを再起動させる暴力的存在である。
・切断という暴力的行為を取繕い、止揚を装うのが建築という古典的概念である。このような建築概念はいずれ解体されるだろう。

磯崎さんの前に偉大な丹下がいて、その丹下さんが、上記の意味での解体されるべき、でもとても大きな存在だったのが、磯崎さんの出発点だと言えるようです。
また「前川國男の作ったものは建築ではない.建築からどんどん単純な技術、単純な機能の集積、実用物の方に流れて、ビルディングになっている。」ともありますが、つまりは、丹下さんが提示した日本らしさや、前川さんの実用的であること、というのは、それを「信じる者は救われる」的な教条的なものになってしまうという意味で、建築の自立性を奪うもので解体されなければならないというのか。

人間って個としては弱いもので、ついつい強者や権威に寄り添いたくなるというのは否定できないと思いますが、つまりその弱さが建築においても問題であって、常に自覚的にその弱さから逃げようとし続けない限り知らない間に絡めとられてしまって、居心地が良くなってしまうのかもしれないけれど、結局時代が移り、パラダイムが変わるとその居心地の良さが命取りになるし、それは個人にとっても全体にとっても良い事ではないから、やはり「自立」を常に目指さなければならないし、そのためには歴史を知り、現状を分析し、それらに絡めとられないような建築のつくり方を模索し続けなければならない。
その意味で、磯崎さんはそれをやり続けてきた偉大な先輩なわけだし、だからまずはもっと理解する事から始めないといけないように思います。
ただ時代の流れの中で社会が変わり、価値観が変わり、工業の、作る側の論理のモダンの時代から、商業の、消費者が何を選ぶか?によるポストモダン以降の状況になってきた中で、状況はそう単純ではなくなってしまっています。僕は建築についてはずっと残ってしまうものなので、今であってもつくる側の論理で作るべきだと信じていますが、結果、住宅や小さく、密度が高い建築しか手が出せない、やりたくない、という風になってしまっていて、それはそれで逃げているとも言えるので、逃げずに考え続けたいとは思いますし、こういう偉大な畏友がいることがとても励みになりますね。
随分分かり易い書になっている、とも言え、でもまだまだ難解だとも言えますし、僕も全然まとまりなく書いてしまって良くわからんと思いますので、是非買って読んでみて下さいw