独身者の住まい/竹山聖
- 2014.07.01
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僕の大学時代頃にはコンクリートのハードな建築作品など良く取り上げられてましたがその頃は特に興味もなく、6、7年前かなべにや無何有、という旅館に泊っていやなかなか奥の深い方なんだなと思っていたくらいで、ふとしたきっかけで古書でこれを買って読みましたが、今の僕にはとても興味深い本でした。
独身者のための住まいの設計というかなりレアなものを通じて考えられた事ですが、射程は広く深い。
「日本は停滞しています。均質化して活気がうせつつあります。エントロピーが増大して運動が滞りつつあります。こうした状況の中で、実にわがままこそが住宅の常識をひっくりかえし、大量生産の均質で凡庸な退屈を突き破ってくれる。<独身者の住まい>は日本の住宅の固定観念を根底から覆してくれるばかりでなく、日本社会に風穴を開けてくれる起爆剤になるかもしれないのです。」
小鳥が必ずしも繁殖期で必要でない時にも楽しそうに複雑なさえずりをしてるのと同じように、本来人間も、無駄で複雑な事を好んでする性向をもっている、つまり合理的理由だけではとても理解できないような芸術だとか音楽だとかを愛好し、それが深い文化や個人的な幸せを生んで来たはずなのに、今の社会全般や住宅などを見ると、何故こんなに画一化して「自分らしさ」なんてとても軽薄なレベルに貶められているんじゃないか?それに対して独身者が自らの好みを全投影してつくり、住まう<独身者の住まい>にはとても大きな可能性がある、という論はとても納得できるものですし、まあ僕も似たような生き方をしてますからw。
もちろん独身でなくても、家族のための住まいでも、わがままを通して凡庸を突き破る事はできるので、最初から諦めたり、他人事だとか違う世界の話だとか思うのをやめましょう。
それによって日々の暮らしが変わり、感性が変わり、人生が変わります。