日本文化のキーワード/栗田勇
- 2024.01.09
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この年末年始は籠って日本文化漬け、と言う感じで充実してました。その一つ、本書良書でした。
7つのワードのうち、僕はやはり「あわれ(もののあわれ)」の感性がその他のワード含め、日本の文化や感性を育んだように思います。簡単に説明しにくい言葉ですが、僕なりの言葉としては、「ちょっとしたことに心が震えること」かなと。そしてその感性は異民族と常に戦い続けて、四季などなく力強い造形の自然の中で過ごし続けた民族には発生することはできず、というと、世界の中でも日本くらいにしか育まなかったのではないか?そしてそれが日本文化を作ったと思います。
「さび」は寂と書くように、枯れかけた世界だけど、日本の四季でもそう言う時にこそ新たな生命の胎動が、耳を澄ませばきこえ、「あわれ」となる。どちらにしてもとても繊細な心でなければ感じられないことですね。
そして繊細な感性が空間に対しては、西洋のように意味のある形で隅々まで満たされたようなものには耐えられず、畳だけが襖で仕切られて、布団もちゃぶ台も使わない時は片付けてしまう、と言うような空間を生み出し、その何もないところに何かを感じる感性が「間」を生み出したと。「能」の世界なんて、現代の僕らにはなかなか感じられないけど、「幽玄」な世界をそこに感じてしまう感性があったのだろう。
いくら世界がネットで繋がって生活様式も変わってしまっても、日本の風土はそう変わらないし、僕らの遺伝子も変わらないから、僕らにはその感性がまだ残っているし、日本という国で日々を暮らす限りは、もののあわれ、を実感できる方が間違いなく幸せなのだ思う。
日本食という世界も、そのような繊細な価値観で食材に向かい、丁寧な下処理をして雑味を排して、という意味では繋がっている話だと思うし。
先日完成した竿縁天井の家も、僕としてはそう言う感性に従って作ったつもりだし、「間」とか「さび」が自分なりには盛り込めたかな、とは思っています。
書ききれないほど密度のある内容でしたので、ご興味ある方は是非。