新建築4月号

  • 2009.03.31
  • BLOG


北川原温さんの「長野県稲荷山養護学校」が表紙でした。
北川原さんは以前から構造家と組んで小断面木材で大きな建築の壁や屋根などに金物を使わずに構成するような試みを続けて来られていて、その延長線上として、内部空間にはそんな屋根架構が現れています。
当時の田中康夫知事がやった公募型プロポーザルで選ばれたとの事ですが、この地域に対して
「直感的に『大きな屋根』のイメージ」があったそうで、とにかく屋根をしっかりつくろうと考えたのと、また、養護学校という、感情のコントロールや意思疎通の難しい子供たちに対して、「素直につくる」事にしたそうです。
またその「素直」という方向としては、近代建築が目指したような、直線的で整合性のあるような硬直した空間ではなく、敢えて不均質なズレをつくり、変化をつくることで、子供達の圧迫感や恐怖感を除こうとしたようです。
前に少し書いたかもですが僕も勤めていた事務所で養護学校を担当した経験から、「理性」「感性」と敢えて対比的な言葉を使うとするなら、今の世の中余りにも「理性」が重視されすぎている中で、養護学校の子供達に必要なのは「感性」の空間であり、でも本当は全ての我々にもそんな空間が大切なんだろうとも思います。
でも、そんな感性の建築を目指した結果として、この建築は、「モダン」という物差しで計ってしまうと冴えないように見えると思いますが、それは「モダン」という物差しが頭に染み付いてしまっている私たちが反省すべき事だとも思います。
かと言って、ログハウスみたいなものがいいとは決して思わないし、形にはある種の「洗練」がなければいけないと信じていたりします。
ガラスや鉄などの人工材、そして箱形の形を使えば洗練は演出しやすいでしょうし、木や土なんてものや屋根型を使うと洗練から離れやすい傾向はあると思いますが、でも、木と土と屋根型を使って洗練された感じを作りたいというのが今の僕の気持ちかな〜〜と思います。