建築・美術をめぐる10の事件簿

  • 2010.11.09
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お恥ずかしながらも、本書でやっと磯崎さんが今まで様々な言説を行ない、書を著して来たのか、多少分りました。逆に言うと、今までは、正直、なんでこんなに言説をこねくり回さないといけないのか?というのが分らずに読んでいて、すごいなと思いつつもどうも身にならない読み方しかできて居なかったように思います。
本書では、歴史というのはそんな整然とした流れではなく、ある大きな「事件」が断絶的な変化をもらたして来ている、と。そして自ら経験した1968年の大きな事件というのが、根本的に自らのものの考え方に大きな影響を与えていると。そんな大きな事件の目撃した中心人物としての自覚が、本当に恐ろしい歴史や知的好奇心の源になっているようですし、そんなながれの中で今までの著書を発表して来た、と書かれている、というのが、上記の分りやすさの理由です。
磯崎さんもお歳だからでしょうか。今までそんな自らの解説めいた事は少なかったように(僕の不勉強なだけ?)思いますが、でも読んでいてとても良かったなと思いました。
その膨大な知、というのは僕らの頭に入れてもそのうち忘れ去るだけなのかもしれませんが、でも、何故そんな事を知り、考え、それに基づいて表現するべきなのか、という事は、僕らは知らなければなりません。
僕ら人間は皆、漂流者みたいなもので、でも自分を中心に能天気に考えればそれっきり。でも、少しでも海図を探し出し、自らの漂流して来た出発点と、向かいつつある場所と、知る事によって今自分が為すべき事を考える事ができる。とそんなところでしょうか。
また磯崎さん、きちんと再読せねば、と思いました。
人間誰しも寿命はありますが、磯崎さんは今までのどの建築家よりも再評価されるでしょうね。