建てる住まう考える
- 2010.06.10
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大学の卒論の関係でハイデガーはちょっとかじっていて、本書の「建てる住まう考える」という本が建築関係書で良く引用されていたけれど和訳が出ていなくて、ずっと気になっていたのですが、少し前の本書が出ていたのを知って買ってしまいました。
偉大な哲学者。軽々しく解説じみた事はできませんが、人間というのは死を自覚することが出来る唯一特殊な存在であり、その存在を理解するためには、人間が生まれながらに避ける事が出来ない色眼鏡をはずし、何の思い込みも持たずに見つめてみるという所謂現象学的態度が必要です。(結局人間である限り限界はあるのですが)
そして、住まう、という事を通して、人間は、大地の本性を解き放ち、天空を天空として迎え入れ、神的なものを神的なものとして待ち望む、と、バウエン(建てること)という言葉の源をたどりながら論じてゆきます。
確かに言葉の語源にその言葉の本質が隠れていると思いますし、今の使われ方にはその本質が消え去ってしまっているように思います。日本語だって、住む、済む、澄む、などと同じ読みであれば言葉が繋がっているはずで、その重なり合った部分にその言葉たちの本質が隠れていたりするのでしょう。
うまくは言えませんが、自分なりにはそれなりに感じるところがありますし、やはり、住宅を設計してゆく限りは、住む事、建てる事の本質的な部分を追い求めて、もちろん宗教のように到達する事は出来なくとも、近づく事はできるし、その努力はしてゆこうかと。
話は変わって、今日中間検査といって、構造の検査があったのですが、正方形で、明快な構成をしているのと、大きな傘のような屋根に包まれて、まだ様々な仕上や設備がついていない状態だったので、なんだかとても原初的な見え方をしているように思いました。
逆に言うと、今の住宅とは、様々な仕上げや収納や設備がある事で、住まいの本質なんか見えようななくなってしまっているのではと。
もちろんこのまま住む訳にはいきませんが、「質」としてこういう原初的な雰囲気が出来る限りのこしたいと思いつつ最近は設計をしているように思います。