尾道へ2022

  • 2022.01.06
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今回の建築旅行は初めて?の尾道へ。少しマニアックだけど楽しい刺激溢れる旅になりました。まず尾道という場所の印象は、雑ですが、ベニスみたい。つまり古くて密度と文化度の高い魅力的なところで、中世には栄える要素があったけど、近世以降の人口や移動スピードの増大には適応できない場所、つまり浜松とは対極の場所、ってイメージです。
そしてまず宿泊したLOGは、車が寄り付けない坂道を結構上った上にある、60年近く前に建てられたRC造のアパートを改修して、スタジオムンバイがインド以外で初めて完成させた建物、という。つまり工業製品と対極的な手仕事を丁寧に行うことでしか実現できない空間の質、というものが実現されています。ここは客室で和紙を両面貼りした建具の向こうに縁側的ですが日本家屋でパターン化してしまったそれとはまったく違う、決して高級感はないんだけど上質、というデザイン。簡単に真似できないものです。

ここはライブラリーという場所。建物様々な部位の色は、かなり検討された上決められたようで、この緑っぽいものや別の部屋の青っぽい壁など、確かにできてしまえば「これしかない」って思える色に感じられたりしました。
家具などもインドで作って持ってきたようですが、前述のように車が近づけないので人力で運んだそう。建物が改修なのも新築できないからでもあり、まあ特殊事情の上だからこそこんな建築が成立したとも言えます。
まあ何にしても建築がお好きでしたら、ぜひ、とおすすめできるところでした。

近くにある浄土寺へ。本堂などの国宝が、傾斜地の狭い境内にあるためとても濃密な場所でした。真言宗派らしいですが、ちょうど三田誠広さんの空海を読み終わった後だったし、仏教や歴史の重みを感じながら訪れました。
なんて言いながらランチでワイン頂いて少し赤ら顔で、、いけない。

翌日はレンタカーで島に移動し、伊東豊雄ミュージアムや、LOGで飲んだワインを作っているワイナリーなどぶらぶらしながら次の宿へ。

Azumi Setodaは、この古い豪商の家を改装したところがレセプションとダイニングになっていて、アマン創始者のエイドリアン・ゼッカ氏がアドバイスなど関わったそうで、そこも気になって泊まってみました。
この晩は旅情を味わう?予算を抑える?ためディナーは近くのお店で食べた(タコが美味しかった)のですが、商店街?はかなり寂しい感じでした。

客室棟は新築でゼッカさんが関わったから?外国人向け?か和風が出過ぎないようにデザインされていたのは良いかと思いましたし、お庭も木材も良いものが使われてました。
2mの身長でも気持ち良いと思えそうですが、個人的にはもう少し素材感と親密感のある宿の方が好きですね〜。

最終日のランチはホテルベラビスタに中村拓志さんが設計したエレテギアで頂いて、左奥に見えるリボンチャペルも見てきました。
どちらもプロが見れば、構造的には、ありえない!というものが、デザイン的にもとても高いレベルで実現されていましたが、まあこれを実現させた施主側がすごい、とも言えます。

チャペルは二つの螺旋状の緩い階段を登ると上でで出会える、という素晴らしいコンセプトが美しく実現してしまっていますが、チャペル内部としては開放的すぎて落ち着かないのかもしれませんし、使い勝手、とか言い出したら決して良くないように思いますが、そんなの関係ねーって感じのレベルに突き抜けた建築だと思います。

次は神勝寺ですが、禅と庭のミュージアムとして広い境内にお寺などがある中で異彩を放つ名和晃平さん設計?の洸庭。本業が彫刻家なので彫刻として見たほうが良いような存在で、内部には真っ暗な瞑想空間があるそうですが時間の関係で見られず外部だけでした。
屋根も下の面もサワラ材の柿葺き。造形も素晴らしいけどこの柿葺きは圧巻で、恐ろしい手間と費用も掛かっているだろうし、用途と言えば、それほど人が入れない、真っ暗な空間。僕らの感覚から言えば狂ってるとも感じられるけど、そもそもお寺というのはそんなものだと言えばそれきりとも言えるし、この建物にはその風格は十分にある。あとはこれが100年単位で存在し、多くの人の心に安らぎを与えられれば良いのだとも言える。
そして後で分かったことですが、二つの宿、ベラビスタ、この神勝寺、全ては造船会社の常石グループがやっている/始めたものらしく、資金的にもですが、文化的な意味でも素晴らしい「遠投」をされているんだなと。でもつまりそれは短期的な経済的に見れば問題だらけに違いないでしょうから、こうやって訪れて、感動して、そういった遠投に対する微小でも応援になれば良かったな、と思いました。
おわり