富山〜長野旅行
- 2023.06.15
- BLOG
しばらく前に少し久々の建築旅行行ってきました。車でずいぶん走り回りました。富山県立美術館/内藤廣さん。結構大きくて立派な美術館ですが平日だった事もあり人も少なく、大きい割に展示もあまり多くなく高そうな展示もなく、入場料も結構安めで、不思議な気持ちがしたけど、失礼な言い方をすれば、田舎はそんな高いお金払って美術品をという層が少ないからなのか?と思った。また屋上が公園のようになっていて、そこも人がまばらなわりに警備?で三人も居て、うーん公営だな〜と。。でも立地含めなかなか魅力的な建物だったので、なおさらもったいない感じでした。美術館は都会では商業ベースに乗せられても地方では根本的に違うあり方を探るべきではないかと思う。
名作椅子の展示をしていて、見慣れたものや、おっと思うものも。
宿泊は氷見市のワイナリーSAYS FARMさんに併設された貸切の宿。
富山湾が一望できる良い環境の場所でしたが雨で。。。
ベッドルームもいくつかあり、広い食堂?もあり、大家族や数組で来ても楽しそう。
こんな感じでしたw本当はゆっくり過ごすべき価値のある場所だけど、長い移動もありあまりゆっくりできなかったのは残念。
翌日新潟を通りかかりに谷村美術館/村野藤吾へ。まだ雨模様で、本当は建物の隙間から入った光で内部がより魅力的になるようでしたのでちょっと残念。。こういう個人名の美術館は日本中にあって古いものは結構客足もなく、改修もされず悲しいことになっている事が多い中では、建物にまだ力があるので流石に村野さん、という感じ。建設に至る記録なども展示してありやっぱり恐ろしい熱量をかけなければこういうものはできないと思わされる。
長野市美術館。ついた時ちょうど霧の彫刻が始まり、ランドスケープミュージアム、というコンセプトのように善光寺や山々とのつながりを大切にした建物で、槇さんの血を引いたような宮崎浩さんのモダンな感じが抑えめかつ上品な建物。
隣接して渡り廊下でつながる東山魁夷館/谷口吉生も来てみたかったところ。少し前に行った、せとうちの方と似たようなものでありつつ、ディテールや素材の選び方は、やっぱり格上、という感じ。一日ゆっくりできそうな場所でしたが、またまた移動で。。
軽井沢へ移動し、ししいわハウス/坂茂さんへ宿泊。最近木造の宿泊施設を結構作られていて、那須塩原のアートビオトープも昨年泊まったけれど、表面的には似ていてもプログラム的には変化球でした。
個室は少し小さめで、浴槽も室内にありましたが、軽井沢の気候だからそれも成立するのかと。その代わりに共有部分が充実していて、宿泊者同士が出会って気軽に話したりできる事も狙っているよう。
季節や天候が良ければ例のこのシャッターを全開にしてくれる?のかも。このような場所やライブラリーがあり、他の宿泊者さんはあまり使っていなかったので結構独占状態で楽しめた。
レストランでのディナーはコースで結構高かったので買い出してきたものを共有スペースで頂き、その代わりお酒を頂きに。そしたら他のお客さんと英語で話されている方がいて、どうもオーナーさんっぽかったので店員さんにちょっとお話ししてみたい、と伝えたところシンガポール人のオーナーさんがこちらに来てくれた。坂さんに依頼した理由や経緯、今後依頼するとしたらどの建築家?などお聞きでき、投資家でありつつとても建築がお好きなので作られたそうだけど、本当に贅沢な仕事というか生き方をされているな〜と思いつつ、日本人のお金持ちさんも是非こういうお金の使い方をしてほしいものだ、と改めて考えさせられた。
アートビオトープの時も思ったけど、坂さんの木造(というか他の構造も全てですが)は、悪く言えばおもちゃっぽいというか、無駄に重厚さやシャープさを求めない結果だと思うけど、独特の世界がある。オーナーさんに僕が好きな他の建築家の名前を出したらまだ世界レベルでない、というような言い方をされていたけど、表現としての独自性として、坂さんはこのような形で唯一無二なのだということかな。
それは認めるけど、おそらく村野さんはそうではないということだろうし、実際丹下さんと対照的に世界には出て行かなかった。けどそこに本当の良さもあるように僕は思う。し、僕には世界とか無縁なので世界に対して目立つようなデザインも無縁だし、実際毎日使う方が長い時間の中で満足するようなものを作らないといけないと思う。そしてそこにはやっぱり建築への思想と素材への愛情が必要だと思うし、木造系ビルダーさんが作る、ちょっとセンス良く見えるけど、、というものとは根本的に違うのだ。
宿を出て軽井沢を散策して、千住博美術館/西沢立衛さんへ寄り、建築と展示がとても素晴らしかったのだけど、撮影不可で、外観は撮るところもなかったので、、ご興味あれば検索を。
移動の途中、まつもと芸術館に少し立ち寄りましたが、伊東豊雄さんの建築の中では珍しいある種の重厚さを持った建築。とても良いと思ったけど、伊東さんらしくない。いろんな状況の中で生まれたのだろう。けど多くの市民に使われ親しまれている感じがとてもした。
最後に日本浮世絵博物館は閉館時間になっていたのもあり外観だけ見たけど、ちょいと悲しかった。。
宿泊は奈良井宿(中山道で一番長い宿場町だそう)のBYAKU Naraiへ。このような良い状態の古い建物が延々と残っているのにはちょっと驚いたし、竹中工務店が入って、良い形で改修されていて、右の建物がそれだけど外観にはその素振りは全くない(景観上そうしたのか?)
夕食の時にジン?に檜や他の針葉樹の葉やチップなどを漬け込んだものをソーダ割りにしたものが出てきて、とても美味しかったのと同時に宿のコンセプトなどとも合っていて、天竜材でもやってみたらどうかと思った。そのうち試してみようか?
こんな感じで外部内部とも、元を生かしているけど、なかなか元が生かせる古い建物はもう少ない。あとは50年以上後に、こういう風に生かされ得るような建物を頑張って残してゆくしかない。
最後の帰り道で、清里芸術村と、隣接する素透撫/杉本博司さんでランチ。
鎌倉にあった画家の旧宅を移築して内装設計をしたそうなので、杉本さんの設計としては抑えめに見えるけど、こういう古くて力強いものに新しいデザインで手を入れようとするのは、ヨーロッパの石造建築でもそうだけど、その古いものに対する深い理解と、シンプルだけど勝たずに負けずにお互い引き立て合うようなデザインをする力が必要になるから、なんでもないように見えてとても難しい仕事だと思う。奥にチラリと見えるのが杉本さん設計のゲストハウス和心。すんごい値段で泊まることも可能らしいけど、最後の客だったので食後に外部に出て少し覗かせてもらうことはできたけど、ああいうレベルのものを本当の贅沢、文化というのだろうけど、恐ろしいお金がかかっているだろう。。建築というより芸術の領域だけど、僕らが作る住宅や建築にだって、そこまでではなくても芸術性は盛り込まれるべきなので、違う世界、ではなく遠いけど地続きなので、近づく努力を怠ってはいけない、と思わさせる。そう思うために来た、ということでもある。。
また盛りだくさんで雑なレポートだけど、こうやって良い建築的な経験をすると、人間の営みの生き生きとした部分を受け入れ、増幅させるような力が建築にはあり、それを実現するには、もちろん人間や、素材やデザイン、そして時間や歴史としっかり向き合って、ありきたりなハコとしての建物からどこまで離れて設計をすることができるか、が大切なのだ、と改めて考えさせられました。