家康、江戸を建てる/門井慶喜

  • 2025.10.06
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建築を作る立場として大変面白かったし、日本人なら楽しめると思う。
僕はなぜか(子供のころタイガースファンだったので?)アンチ東京だったこともあり大学は大阪に行ったので、東京についてはあまり知らない。
日本の中心の東京となった江戸が、家康がいなければ、間違いなく、今ほどの存在になってなかったのだろう、と思うと為政者の力って巨大になりうるのだと改めて思った。
ちょうど高市さんが選ばれたけど、少し前から正直国政の状況がアホらし過ぎて興味も失っていた。でももしかして為政者が為政者としての自覚を取り戻す?きっかけになればと思う。

今の東京あたりは利根川の河口に近く、水害やらでいつもぬかるんで農作物もできず、飲み水もなかったけど、利根川を曲げ、飲み水になる水脈を引き、巨大な都市となる下地を作ってしまった。
まあ歴史の話は詳しくないから別途調べていただくとしても、そんな広大な荒地だったような場所は、秀吉が天下人の時に、家康に三河などの領地と引き換えに押し付けた?ような感じだったらしい。でも家康はそこに可能性を直感したからこそこんなことになった、と描かれている。

石垣を積み、城を建て、そこにもとても面白いストーリーがあって、そしてそれは「公共事業」であるから、人々は働いて、潤い、人がさらに集まり、金貨も作って江戸という巨大な存在になってゆく。今の時代、公共事業は無駄遣いだと思われているのは、基本的には意志のない為政者が作られてきたからだと思っているけど、家康のように強い意志を持って行えば、同じ労働も同じお金も、全く価値の違うものに化けてゆく。
国政でも国交相にずっと公明党がなっていたのが本当に許せなかったけど、つまり自民党としてはそこには「意志」はないのだよと。角栄という巨大な存在があってそれが転倒させられた過去があるから目を背けているのかもしれないけど、「国づくり」今の時代はAIやらさまざまな要素が入ってきたにせよ、やっぱり基本は土木建築なのだと僕は思う。

家康は100年先をみて、江戸を作った。
でも東京はちょっと大きなバケモノと化してしまっている。つまり誰一人コントロールできない。
そして本来地盤が悪く埋立地だらけなのに、高層ビルばかり建てて、構造計算上は杭を打っているから数字上は成立しても、やっぱり「無理」があるのだと思う。
今の世の中、一番力があるのは、価値はないものに価値を感じさせる力ではないか。東京はあんなに密集して住む価値なんてあるのか?
株が上がり、地価や不動産価格が上がらないと国ためにならないと思わせられているように思うけど、庶民から言えば、逆なのだ。

家康が好きなわけではないけど、多くの戦に倒れた人々のおかげで平和な江戸を築くことができたのは確かで、江戸時代はそれまでに比べればずっと笑顔に溢れた時代になったのだろう。
プロジェクトpro-jectとは、未来に向かって投げかける、という意味だ。
そして僕らが家を作るのもprojectだ。
政治家が為すことは、無形のものでも全てprojectであるべきなのだ。