堀部安嗣さん講演会

  • 2008.11.22
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今日講演会でした。
今活躍されている建築家の中でも最も共感できる方なので、昨年この本の出版記念シンポジウムでもお話を聞いたりしていましたが、今日はじっくりゆっくりお話を聞けたので、本や雑誌では感じられない部分まで感じることが出来、大変良かったです。
「懐かしさ=今の自分を肯定してくれる感覚」というのが一番大切にされているところだと思いますし、また建築というのは、外部では得られない空間を得るために存在すべきだ、というのも本当にその通りなのですが、世の中の建築たちは、表面的な形をこねくり回しているだけで、それは当面おもしろおかしくても、時間の流れに耐えられるものではないにも拘らず、何故かモダニズム以降の大きな傾向になってしまっています。
その理由は、今日のお話にもあったように、エアコンが何故もっとすっきりしたデザインになれないのか?それは家電やさんに並んだ時に目を惹き、売れなければ商品としての存在価値がない、というのと同じ事で、結局「商品価値」という軸で建築がつくられてしまっているという事の結果だと思います。
堀部さんが何度か強調されていましたが、自分が建築をつくってきていることについて、自信なんて本当は全然なくて、早く事務所に帰って自分で図面を描かなければ不安で仕方ない、という気持ちは本当に良くわかりますし、設計がまとまっても、竣工しても、不安が残っていて、実際その住まいがどのように住まれてゆくのか、という事にとても真摯に向き合ってられるからこそ、浮ついた所が全くない空間ができるし、きっとずっとずっと大切に住まれてゆくんだろうなあって、感じます。
また、以前の日本というのはとても美しいまちなみを持っていたのに、外国人がとても評価をしてきたりしても日本人はそれを伝えようとして来なかった事がとても問題だし、今のどうしようもないまちなみが出来た元凶だとも思いますが、僕たち設計者は、少なくとも自らの仕事を、後世に誇れるようなものとしてつくってゆかなければならないと思いますし、それは、とても謙虚で真摯な態度でしかつくれないと思います。
「自分が自分が」という傲慢な世の中になってしまっています。
「エコ」だなんて言ったって、結局人間中心主義的な解決方法しかしていません。
まずは、建築、住宅というものが、真の意味でどのように存在すべきなのかという事を問い続け、そして、その具現化の過程で、高い山に登るように、苦労を惜しまず、出来る限りの思慮を行うこと。僕たち設計者に求められていることだと思います。