国家/プラトン

  • 2021.01.23
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要約は表のものを読んでもらった方が良いですが、これが2400年ほども前に書かれたということは色々な意味で驚きを与えてくれます。
初歩的な言い方をすると、プラトニックラブ、のプラトン さんなので、彼が語る愛が相手に何か具体的に求める様なものでなく、ある種自己犠牲的な普遍的なものである様に、本書では「国家」や「正義」が語られます。
そしてそれを実現できるのは「哲人」つまり哲学(知を愛する)をする人であり、でもそれは簡単なことではなく、若い頃から才能のある者を育て、有益な経験を積ませても、50才を過ぎて初めて国家が統治できる、と書かれています。
また本書も「対話」という形式で書かれているのですが、一方では俗人というか、目に見え経験を与える「現実」をベースに価値判断をさせられてしまっている側と、そうではなく、超越的な、哲人としてのソクラテスの掛け合いを続けさせながら、最後には俗人を哲人に引き揚げる、というか。。でも本書が800頁もあり、決して小説的に引き延ばされているのではなく必要な議論として配置された結果だと思うので、やっぱり俗人と哲人の溝は深いのでしょう。そしてだから、その議論を簡単に要約することは僕にはとても無理なので、是非読んでください。
読んでいて面白かったと思った部分は、「哲人」は魂や真実に迫る存在として高みにいるのだけど、詩人や画家たちはただ「真似」するだけの存在であり、「魂の低俗な部分を呼び覚まして育て、これを強力にすることによって理知的部分を滅ぼしてしまう」むしろ害となる存在なのだというのですが、確かにその面は強いと思うけど、魂に近づき、それを示す様な詩や画も(現代にはなくても)少なからずあった様には思いますが、それはその人に哲学が備わっていたから、と言える様には思います。
次に子供を作る時期としては女性が20〜40歳。男性が25歳〜55歳、とあり、今の様な医療がなかったのに、いや、当時のギリシャの人たちは色々な面で健全な暮らしをしていたんだろうな〜と思いました。
そして、国を護る哲人たちは、妻や子供を共有すべきだ、というのは、破廉恥な話では決してなく、上記の様なプラトニックで自己犠牲的なあり方を前提とするなら、確かにその通り、ですし、争いのない素晴らしい世の中なんだろうとは思いますが、なかなか目指すところが高いですよね〜。
そして最後の10巻では、魂は不滅なもので、人間や動物も互いに生まれ変わり、生きている間に良い行いをすれば良い報いが、悪い行いをすれば悪い報いが訪れる、という物語を引き合いに出し、でも恵まれている状態だと人間は堕落して悪い報いを受け、その逆もあり、つまり常に正しい方向/正義に向けて努力を続けなければいけない、という様な終わり方になっています。
まあ僕はこういう哲学的な考え方は好きだし、現代人に芸術は不要とは言わないけど、上記の様に哲学を伴わない芸術も、政治も、もちろん建築も、害でしかない、ということには賛成なので、もっとみんな哲学をするべきだと思います。