建築に何が可能か

  • 2013.10.01
  • BLOG


1967年出版。原さん30才過ぎかあ。
読むべき書として思ってたのですが貴重書で買い控えてましたが6000円程で買いました。
何しろタイトルが大切なのですが、人間も建築も「何か」を問う事は不毛でしかなく、我々の行動の指針としては「何ができるか」を問わないといけない。という理由が分かれば、まあ難しい話は半分読み流しても価値があるのだと思います。
読みながら付箋を張り出したら付箋だらけになり、こんなもの引用してまとめられる程簡単じゃないし、誤解を恐れず分かり易く自分の言葉にしてみましょう。
例えば、ケータイにとは何か?なんてのは変わり続け、何が出来るかも日進月歩なように、人間や建築という存在さえも、新しく現れたさまざまなものによって変質し続けるので、現在のケータイが何かをある程度描く事はできて人間も同様かもしれないけれど、根本的に、変わらぬものとして「何か」と問うたり求めたりする事は不毛だ。という事だと思います。
ただ、「少ない体験から豊かな意味を発見し、育ててゆく生活態度は、多様な体験を生のまま記憶して重ねてゆく態度に移行しようと」半世紀近くも前からしていて、現在はさらに進み、本当は人間も、建築も、より良く変質し続ける事にこそ価値があるのにその多様さを傍観するような態度は多様さを育てるという態度は真逆のものなのである。
例えば建築ではミースの均質空間(ガラス張りで等間隔に柱が立ちどこでも同じように使える)が一世風靡して結果どこも似たような都市になってしまっているが、それはあくまで多様さの中のひとつの良い回答であっただけで、それに盲従してしまった、というのが上記の態度の現れといえるのだと思います。また「形態は機能に従う」という有名な言葉であたかも客観的にデザインが進められるかのように思い込まされていたけれど、使い易さや用途などと言ったものも所詮は確実なものではなくある個人や社会の中で意図的に決められているだけのものであるから、客観的(つまりには唯一の正答があるかのような)ものとは決してなり得なかったのです。
そこで、建築はいかに生み出されるべきか?「建築が時代の本質であるダイナミズム=運動を表現せねばならないというわけではなく、いま計画しようとしている生活の本質的な理解は、必ずダイナミズムを抽出するがえに、建築は必然的に、結果としてダイナミズムを表現する」
以上のような話の上に、原さんの建築論として「有孔体の理論」があるのだけど、どうも読みながら実感として理解しにくいところもあって、僕はついつい生命体に置かえて考えてしまうところがあるのですが、つまりや細胞という単位に形があり役割があり、それが置かれた状況(体液内とか)でお互いに必要なやり方で必要に応じてつながりやりとりをして、更に大きな単位として臓器やらができ、それらも同様につながり、人体を形成し、同様に、家族や社会。。。という事に読み替えてもよいように思う(そう書いてはないのでお聞きしてみたいけど多分違うといわれるだろうな)。でも、「形態的にはカオスで、機能的にはコスモスである集団が本来の有孔体の集団である」というのも生命体そのものの気もするし、「我々が目指している世界は、変化の世界であり、、静止している状態を本来の姿ととらえる世界像ではなく、変化が本質の姿であると考える」というのも、例えば人でも動物でも子供の成長過程、というのは常に新しい環境や刺激に対して敢えて飛び込んで行ったりしながら常に行きてゆくための変化を続けるのであり、長い時間での進化をとっても同様なダイナミズムを持っていると思ったりもします。
ただ、問題は動物は外から変化が常に与えられるのに対し、人間は自ら変化を遮断しようとするので、いかにその変化をつくり出すか?
「シュールレアリズムの美学は、論理的には把握できそうもない関係の関係づけを表現の世界でやってのけて、ありそうもない事象を日常化してしまう事、つまり新たな関係づけを成立させる事を企てた」という辺りにヒントがあるのでしょうね。
さて、自分のやっている事と断絶させたままではいけないので。。
つまりは好きだから、日本だから、という理由で杉と漆喰を繰り返しちゃあいかん、という事なんですよね。
もちろん他の可能性も可能な限り排除せず比較検討を尽した結果ならよくて、それは素材に限らずプランや形態もという。
でも僕としては、最近建築をつくりながら生命体をつくっている意識をもっているんですが、物理的な空気や光などだけじゃなくて、建物があたかも意志を持つように有孔的、つまり開いたり閉じたり(建具の開け閉めとかいう現実的なレベルでなく)するものが作れたら良いし、結果、うまく使われ、長く使われてくれるのではないかな、とは思ってます。
と、現実はいろいろと大変ですが、だからこそ、常に壊しながら進む、という決意が必要なんでしょうね。疲れちゃいそうですねw