空間感/杉本博司

  • 2017.12.27
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肩書き?は、現代美術作家として写真を発表されていて、古美術商も営み、2009年には設計事務所も作った、そしてたまに新建築に載っていたのもあって気になってはいたけど、こうやってちゃんと向き合うのは初めてでした。

サブタイトル?に「スター建築家の採点表」とあるけど、拠点がアメリカだそうだからか日本人には認識は低いけど、作家としてはかなり評価をされ続けていて、名だたる美術館で展覧会を行い、また自ら所有の作品を展示するようで、つまり展示内容を自らの意図で行えるからこそ、その美術館が展示をする場所としてどうなのか、ずいぶん苦労もされたり、たまにはとても感激するような美術館で行なったりされて来た、そしてそんな経歴もあって建築には自然に足を踏み入れて来た、というような方のようで、読んでいて面白かった。

あと古美術商もやっていることもあってか、多分好きだからだろうけど、とんでもない古美術品も所蔵されているようで、自らの展覧会にそれを合わせて見たり、とずいぶん面白いこともされて来ているし、「今時代は確実に衰微へと向かっている。どうせ未来がないのなら過去に固執するという手が残されていることを、忘れないことにしておこう」なんて書いているように、骨董の魅力は郷愁などでは全くなく、現代私たちが作っているものも同列として捉えるべきだけど、しかし、現代のものに全く勝ち目ない、ということに気づくことから始めないといけない、と僕は思うけど、思われているんじゃないかと思ったし、そこをよく分かってられる方だから、美意識が深く、ブレもなく、その辺の建築家よりずっと良い建築を作れてしまうんだろうなと思うし、僕もそんな美意識を身に付けたいとずっと思って来たところでもある。

面白い部分はたくさんあったが、一つだけ、谷口吉生さんをとても評価されていて、丸亀の美術館が20年も経っても美しくあり続けている理由を、谷口さんにぶつけたところ『僕の建築はもともと古いから、古くならないんですよ」と意外な返事が返って来て、「この言葉は正調モダニズムと言えば良いのだろうか。コルビュジェが目指した近代の箱を、今でもさらなる進化を目論んで追求を続けている」という節は、なるほど、と思ったし、モダニズムというのは流行りにされてしまったが、本質は流行りではないということを再認識しなければならないのだと思うし、杉本さんもそのお立場だ。

僕にも有り余るお金があれば、そんな古美術や、杉本さんの作品を手に入れたいものだw