新しい国へ/安倍晋三

  • 2014.01.03
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ちゃんと知りもせず文句ばかり言っていてはいけないなあと読んでみましたが、第一次内閣のころの「美しい国へ」に増補してこの本になっているのだけど、「美しい」「新しい」という言葉の重さはまず何も感じませんで、そこはがっかりかな。

まず靖国の件。僕も勉強不足でしたがその他事実がどうであれ東京裁判で戦犯と認めてしまったのだから合祀された所へ私人としてとは言え総理大臣がゆくのは東京裁判を否定するから良く無いんじゃないかと思ってましたが(国際法上も本来は無効なはずの)判決で裁かれた戦犯たちはまがりなりにも刑をまっとうしたのだし、A級戦犯だった重光葵はその後外務大臣で国連にもゆき、勲も受けたのに糾弾されなかったり、昭和26年には国内法で戦犯たちをいかなる意味でも犯罪者として扱わない、と決めたりしても何も言われて来なかったようだから、確かに今さら参拝にケチを付けるのはおかしな事だとも思うけれど、何故政治家たちもメディアももう少しそれをきちんと説明しないのだろう??
というか、安部さんもそれをきちんと言わずして行くからいけないんじゃないのかなあ。

あと、国家のありかたについて「やみくもに小さな政府を求めるのは、結果的に国をあやうくすると思っている。国民一人ひとりにたいして温かなまなざしを失った国には、人は国民としての責任を感じようとしないからだ。」とあるけど短絡的で都合の良い言い方だよなと。つまり貧乏な家庭の子供は家族に愛情を感じないと短絡的に決めている事と本質的に違うのかなあ?

年金を正当化(まあ立場上仕方ないけど)して、平均年齢まで生きれば払った以上に貰えるから得だ!というのだけど、金利の事も、厚生年金で企業側が半分出す事も、税金から半分出す事も考えずに計算して得だ、なんて言われて納得する程読者はバカだと思っているのかなあ?

教育について、子供たちが国に余り誇りを持たず、勉強ができるよりみんなから好かれたい、というアンケート結果(諸外国と比較して)に対して、サッチャーのような強い教育改革を!というのは半分そうだなというのと、でも僕は、それは親が良い後ろ姿を見せられていないんだから教育に頼ってもダメじゃない?というのが持論で、親世代がもっと魅力的に自らの人生を楽しんでいる姿を見せれば必然的に変わると信じてます。

「巷には少子高齢化を迎える日本においてはデフレは避けられないという議論もありますがこれは誤りです。実際に多くの国は、人口が減少していてもデフレには陥っていません。なぜなら政府と中央銀行が協調した金融政策によってデフレを脱却しているからです。」
なるほど!と思いますか??

まず「少子高齢化」と「人口が減少していても」は違うでしょ?少子高齢化では働ける層、つまり購買力がある層が減ってゆくから需要が減り物価が下がるのはある種必然で、人口は減ってもは働ける層が増えていればそうはならない(デフレの正体の受け売りw)

そして「なぜなら」も何にも解説になっていない。つまりこの文章は原因も整理できず解決できる理由も伝えていない、意味のない文ですよね。
「私は長期的には、東京一極集中を解消して道州制を導入すべきだろうと考えています。」また彼の地元の山陰には新幹線も高速道路もないから企業を誘致しようにもできない、と書いてあります。

そうか、それで国土強靭化とか言ってさらに地方にお金をばらまこうとしているのか!なんて思いつつ一方では東京にはオリンピックが来るし規制緩和と言えばやっぱり首都圏だし、どう考えても今後の流れは東京の一人勝ちだし、一方で地方に行けば行く程悲惨な状況が待っているのは冷静に考えれば分かるはずです。地方で使われなくなって更に足をひっぱるインフラなんてこれ以上やめて全く違ったありかたで中央と地方の共存を目指すべきだ、というのはまた藻谷さんの里山資本主義の受け売りですねw
まあでも、生まれ育ちはズルいなと思うけどさすがにサラブレッドなんだろうなと変な関心はしましたし、強いリーダーシップ。には期待はしましょう。