今年もがんばりましょう!

  • 2009.01.01
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新年おめでとうございます。
年末西日本方面をバタバタ旅行し、新旧建築など見たりしてきましたが、それは改めてとして、読みかけていたこの本をまた読んでいました。年初はなんとなく気持ち新たに心の奥深くを見つめてみたい気持ちになったりしまして。。
ドイツの哲学者オットーペゲラーの章「建築と美しさ」では、「芸術」と「有用性(経済や社会性)」を結びつけようとした近代建築を推進したグロピウス以降の建築と美との関係に異論を唱えています。
一方で同世代の詩人ゴッドフリード・ベンの「芸術とはあらゆる現実との関係が存在しないこと」という言葉を対置的に示し、どちらが正しいと言うのでなく、「大地を人間の安住の地とし得るかどうかも確信することなしに、大地を次から次へと住居群単位で覆い尽くしつつある建設産業」と「自己の存在理由として根源的な美しさを造り出そうとするのだが、、どのようにも住めない『焦土と化した大地』しか約束しない無力な諸芸術」という現状分析をします。
また、美というものについて、「人が愛するものこそが、最も美しいのだ」という詩の一部を引いたり、「存在するすべての中でも、卓抜なものとしてそしてすべてをつなぐ『存在』」として美が作品の中に現れる」という詩人の言葉を引用します。
最後に今後の建築の課題として「世界ー内ー存在」を体験可能とする、という事を挙げますが、「世界ー内ー存在」はハイデガーの有名な概念で、人間の存在というのは他の何ものとも違った特別なあり方で、生まれた時には既に、そして常に、「世界」というものに投げ込まれて存在している、という概念で、人間の本質を示す言葉です。
なんだか言葉だけだと単に言葉を難しくしているようにしか聞こえにくいものなんですが、こんな事を少し頭の隅に置きながら、何百年、千年と存在し続けた建築などを感じてみると、この建築ができた背景には、無意識的であるにせよ、「世界ー内ー存在」のような人間の本質を目指す意識があったに違いないと感じたりしますし、今回の旅行でもそんな事を少し感じて帰ってきました。
皆さんも正月番組は程々に、せっかくの時間を読書で過ごしましょうね(^o^)