三養荘に宿泊

  • 2007.12.30
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伊豆長岡にある旅館「三養荘」に泊まってきました。
以前、仕事の関係で修善寺の「あさば旅館」に泊まり、やっぱり良い旅館はいろいろな面で素晴らしいなあ、と感じ、その後いろいろ調べていましたが、私の好きな建築家、村野藤吾さんが設計されていることもあり決めました。
エントランス部分の写真ですが、とても美しい屋根とが迎えてくれます。
軒、けらばが、大きく出されながらも、先がとても繊細につくられ、また幾重にも折り重なるような屋根が村野さんの真骨頂だったりして、惚れ惚れしてしまいます。
村野さんはとても造形的だったり、新しい表現を試みてこられましたが、和風のものもとても美しくつくられています。内部も照明などもオリジナルで設計されていて、様々な村野さんらしい造形が大小折々に配され、華やかな感じがします。

4万坪ほどの大きな敷地に40室ほどが、この旅館の最大の魅力である、壮大な日本庭園の中にゆったりと配置されているため、廊下が長く、その廊下からも様々に庭が演出されていました。毎日庭師さんが手入れをしているそうです。
ここまでの庭園はそう無いにせよ、日本の建築はもともと庭とともに有ったと言え、内部と外部といういうよりも、一体化して存在していました。また木造建築に木製窓であることが、より、内外の意識を感じさせない要素だったように思います。
そんな空間にいると、気持ちが本当に落ち着き、ボーッと時間を過ごせてしまうのがとても気持ちの良いことだと思います。

私は村野さんが設計した新館(昭和63年オープン)に泊まり、部屋から庭をみた写真です。また、建築をやっていることを話したら、仲居さんたちが、とても丁寧に説明してくれたり、他のお客さんが居ない部屋や茶室なども案内してくれ(画像にチラリとう写っています)、もう1枚の写真にある少し古い方が本館(昭和4年)です。
旧三菱財閥の創始者岩崎弥太郎氏の長男久彌氏の別邸だったこともあり、とても良い材料が使われていました。
宿泊客は、やはりリピーターが多く、それぞれに好きな部屋を指定されるようですが、人それぞれで本館だったり新館だったり、全て間取りや庭の見え方の違う部屋をそれぞれに好まれるようです。
いくつかの室を見せて頂きましたが、私はやはり新館の方が好きかなと、あと泊まった「紅梅」もとても良い部屋でした。

最後に庭の小高いところにある四阿(あずまや)から一望です。
分かりにくいですが、奥にぐるりと分棟で室がつながっています。
40室あるので、それなりに客はいるはずですが、とても広い敷地に分散していることもあり、他の客の気配は余り感じることもなく、でも常に様々に庭を感じることができ、とても贅沢な体験でした。
ただ、こんな要素を、ちょっと住宅の中に盛り込む事はさまざまな形でできると思います。
もちろん小さくても庭や外部をつくれればいいですし、でなくても、空は平等に存在します。あとはいかに自然に内外を感じないつながりを生み出すか。
時間に追われる事が普通になってしまっている現代社会。たまにでも、縁側に座って 庭をボーっと眺めて時間を忘れるような、そんな時間をもちたいものですね。
まただいぶ先にはなりますが、旅館の計画にも関わっていますので、もっと良いところを体験して、自信をもって薦められるものをつくりたいと思います。