マルクスの逆襲/三田誠広

  • 2021.02.17
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以前から、大学の全共闘の真っ只中で生きた先輩の生な話を聞いてみたいと思っていたので、とても興味深く、またいろいろと良い説明がされていて、他の著書も読んでみようと思いました。
内容的には先日書いた、「人新世の資本論」と被るような、つまりは今の時代だからこそ、マルクスに大きな可能性を見出す、という感じで、12年前に書かれているので本書の方がずっと先を行っていたとも思います。
そして、日本に関して、なるほどそうだよな〜と思わせてくれた部分。
「戦後の日本の経済成長は、まさに社会主義と同様の統制経済によって成立した、、、、実は、日本はマルクス主義国家だったのだ」
「敗戦の段階で、日本国民は全てが大貧民だった。しかも戦前のファシズムによる統制経済を推進した官僚機構はそのまま残っていたため、直ちにプロレタリアート独裁と同様の、国家主導の計画経済を実施することができた」
「戦後の日本の官僚機構を支えていたものが3つある。郵便局、国債、そして閉鎖的な金融政策」そしてその巨額な資金で高度成長を成し遂げた。
でも「プロレタリアート独裁による基幹産業への投資で経済成長が実現するのは、インフラが整備されるまでの初期の段階に過ぎない」その後は「民間企業の自由競争に委ねると共に世界を見据えて、新しい産業を起こすための基礎研究や技術開発に政府の資金を投入しなければならなかった。しかし政府と官僚は何もせず、ただ資金を地方にばらまいただけだった」
そしてデフレで日本は徐々に沈んで来ているわけだけれど、それは私たち日本人が、上記のようなことや、これからどう進んでゆくべきか、ということを真剣に考えて来なかったからだと思う。また、面白かったのは「『自由』という思想は実は工場主や資本家と呼ばれる人々が提唱したもので、決して民衆の側から求められたものではない」つまり資本家が農民を農地から引き剥がすことで大量で安い労働者を確保するためだった、のに、私たちは「自由」をなんでこんなにありがたがっているのだろうか?

「マルクス主義者たちが理念として語る共産主義の世界は、まさに社会と個人とが一体となった理想の世界だ。そこでは労働に対して資金は支払われない、私有財産のない世界だから、金銭には意味がない。労働は自分のためではなく、世のため人のためであり、周囲から感謝され、評価され、社会に貢献し国に尽くしたという充実感が得られることが、最高の報酬なのだ」と。理想論でありうまく行きっこない、って思うかもしれないけど、一昔前の日本はそんな国だったように思うし、だからこそ上記のような戦後の復興も果たした、と言えるように思う。そしてそれは消して上記の意味での「自由」ではないですよね?でもずっと幸せかと。

そして全共闘世代としての実感として、「全共闘運動は結束の緩やかな大衆運動だったはずが、その中には禁欲的な原理主義の芽が潜んでいた。それがやがて連合赤軍などの過激なテロリズムに発展してゆく」という危険性を認識しなければならないし、それによって日本ではマルクス主義は危険なものだというレッテルを貼られてしまった、という。つまりマルクスはもちろん万能ではないけど、大きな可能性がある思想なのに、ダメだと決め付けてしまっているので、まずはその色眼鏡を外して、謙虚に学んで見る必要があると、改めて思いました。
いつのながらにまとまりのない内容ですが、興味があればぜひ読んでみてください。