長谷守保 建築計画

青木さんと図式

先日、空間図式についての青木淳さんの文章についてかきました。
一方で、新建築の3月号に青木さんによる「図式の崩壊から」という記事がありました。(Y君に言われて思い出し)
その「崩壊」というのは、もう図式的な建築の作り方に限界がある、という意味でなく、青木さん自身の建築のつくりかたに図式的なものを手段としないようになった、という事です。
「建築とは、ある特定の世界を、ぼくたちの現実世界の中に、現実の物質や空間によって定着させること」であり、その世界とは、そこにいる人がもつであろう「ひとまとまりの感覚」と定義されます。
一方で、図式的にその「世界」を実現させている例として、せんだいメディアテークを挙げていて、とてもその世界を実現しているものであると評価します。この模型写真を見ても分かりますが、大変図式的ですね。
一方で、青木さんは、図式ではなく、ルールを手段として、同じ世界に近づこうとしていますが、どちらにしても、図式も、ルールも、あくまで手段にしか過ぎないもので、その「世界」につながるようにその手段を「研ぎ澄ます」ことが、建築です。
青木さんは、あらかじめ行為が決められていないような、その場所を使うことによって使い方を発見できるような質を持つ空間として「原っぱ」的なものを目指されていますが、その実現のためには、図式的なものでは強すぎで、様々な意味が不安定なまま行き来するような中でたどり着く事が必要なのだと思います。
青木さんが実現されたいのは、「いまだ知らぬいろいろな世界がどこまでも広がっていて、そのどこにでも居られるけど、今はここにいるし、ここに居てよいのだ」という感覚だそうで、確かに昔原っぱで(私はかろうじてそんな世代で。。)遊んだ時の感覚はそうだったんだと思います。
そんな原っぱや、廃校となってしまった空間(それを違った用途で使う)のように、結果的に出来てしまったものの空間の質を、意識的に生み出すというのは、この合目的的な世の中では難しいですが、そんな世の中だからこそ、「原っぱ」のような空間が逆に必要なんですね。
ただ、フリースペースをつくっておけば実現できる訳ではなく、そうなるためには、ある空間の質が必要だから、ただ意味のないフリースペースをつくるのはやめましょうね!!
ちなみに青木さんの講演タイトルは「青森県立美術館・以降」です。恐らく、そのあたりの建築のつくりかたについて、ひとつの転機として意識されているのかな、と思います。
ただ、この青森の図式的な絵は、図式としては位置づけられていないそうで、図式であれば、この断面からその後の平面などが展開できるのでしょうが、それが出来ず、上記のような「意味の行き来」というようなルールによってその後の設計が進んだという事です。
でもそのようなルールで設計を決めてゆく、というのは、想像しただけでも恐ろしい時間とエネルギーを費やしたのだろうな、と思います。

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On 11月 11, 2007
by hase
in けんちくーよむ

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