長谷守保 建築計画

遊ぶ鉄工所

しばらく前にBSの番組に出られていてとても感銘を受けたので読み、自らの今後の仕事のあり方についても考えさせられる良いきっかけとなりそう。

いわゆる「下請け」もしくはさらに「孫請け」を大企業の上から目線で考えれば簡単に分かるように「生かさず殺さず」奴隷にも似た存在にならざるを得ないし、いつでも他社に変えられますよ、と脅されれば頭が上がるわけはない。

そんな状況ではいわゆる「ジリ貧」になるのが宿命で、著者は両親が作った鉄工所のそんな面を目の当たりにして絶対入りたくなかったがやむなく入るしかなくなったから、下請け(ジリ貧)を脱却して儲かった。と言えばそれきりなのかもしれない。

さて「ジリ貧」を、目先の生活のために将来の生活の向上を諦めること、と定義してもそう外れてないと思うし、下請けに限らず、本質的には私たちの身近に転がっていることで、目先のお菓子につられて太ってしまうとかw、それを乗り越えるにはやっぱり視線を目先からずーっと先に持ってゆくしかないし、著者もそうして、普通に真似のできないレベルの努力をされたから今があるんでしょう。

そして僕の仕事(広く建設として)の状況も「目先」のために「未来」を犠牲にする「ジリ貧」が溢れてますし、僕自身もそれから逃れられているとは言い切れないと思っています。でも志や理想としてはずっと先に持って行っているつもりではいますが、欠けているなあと思ったのは、それを実現するための「合理化」で、著者も、機械でできるのに隣で人間が見ている、という無駄をなくすために随分刃物をダメにしたり機械を壊したりを繰り返しながら最低限人間がやらなければダメな事だけをやればできるようにする事で、ほぼ一品の高品質オーダーメイド部品、という鉄工所ではあり得ないようなものを本業化されて来た、という事なんだと思いますし、通常ならそんなものは能力と経験のあるベテラン職人が全て手作りで、となるところを新入社員がある程度の入力をすれば夜のうちにできてしまう、という事を実現されたという事なのですが、建設の世界はまあまた違った複雑さもありますが、似たような取り組みができる部分がまだまだある、と思いました。

もちろんこの会社もそうですが、「標準化」したりできる事の幅を狭めてしまうのではなく(成果が出る)→(ノウハウを標準化する)→(キャパシティが空く)→(新しいことにチャレンジする)→(成果が出る)という「好循環」を目指す事が重要なのだと思いますが、単純に言えば人的エネルギーの無駄を減らしてそれを質の向上に向ける、ということで、著者も言っていますが、昔気質の「職人」はそういう意味では「無駄だらけ」だからと頭から否定していて、そいいう意味での無駄が僕の仕事の周りにもまだ残っているなあ〜ということです。

お国の「働き方改革」には違和感だらけですが、上記のような意味での改革は必要だと感じまして、自分が設計するものを施工いただくに当たって、できるだけ無駄がなくなるようなことについて、監督さん、職人さんの声も聞いたりしながら、すぐに効果が出るような簡単なことではないのは百も承知ですが今後10年、20年という中で取り組んでゆかなければそれこそ「ジリ貧」だぞ、と思いました。

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On 9月 3, 2018
by hase
in BLOG, みるーよむーかんがえる

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