長谷守保 建築計画

自動車の社会的費用

しばらく前に亡くなられたと色々取り上げられてましたが、宇沢弘文さんは経済学の大家らしく名前に記憶があった程度で全然知りませんでしたが、この書は是非読んでみたくなりました。40年も前のものですが、問題は何も変わっていないというか、提議されたのにその後何も好転していないというか。。

前からの持論ですが、車はもともとこんなに普及したり社会においてこんなに大きな存在になるとは考えられていなかったようですし、僕も本来そうなるべきではなかったと思っています。つまり公共交通がもっと残って発展してそれにあうように人々が暮らし産業が成り立つような姿が十分あり得たしその方が良かったと思うし、もし宇宙人が地球(特に日本など)を遠くから見たら、車が主役でそのために多くのものがつくられていて、人間はそれを補う脇役に見えるくらい、車やそれに伴う道路や駐車場の存在が大きすぎるんじゃないかと思っています。

本書の問題意識はそこに重なるのですが、40年前も今も、ガソリンや車への税金が随分取られていてそれで道路建設や維持がある程度まかなわれている現状があるからと言って、決してそれで良いはずがなくて、未だに多くの人が事故で亡くなり、体が不自由になり、安心して道路が歩けなかったり、昔だったら子供の遊び場になっていたような道も全て車に占領されてしまって、というものへの代価を何も払っていないし、その代価を同算定するかについてそれなりに計算はされて来ているけれど、人の命はその人がその後稼ぐであろう賃金を基にしていたり、景観がズタズタにされていたり、安心して、楽しく歩く事さえできないという事への代価が、はっきり算定しにくいという事で放置されているに近いけれど、本来人間と車が良い形で共存できたとすれば、全ての道に4mくらいの歩道と並木くらい必要だから、それをつくって維持するのにかかる費用が、本来の代価ではないか?という論です。

40年前とその金額の根拠は変わるでしょうけれど、当時で、車1台あたり、年200万だ、と書いてありますが、当時は物価は安かったですが金利は高かったため今同じ根拠でやるともう少し安いかもしれません。でも、車を持っていると毎年さらに200万払わなければならない、という意味ですからとても庶民には乗れなくなりますよね。つまり最初に書いたとおり、車なんて趣味で、お金持ちだけが持つべきものだったのに、最低限の道路しかつくらない事によって沢山の人が車に乗れる状況にすることで結果、道路と車だらけになったけど、残ったのは、多くの交通事故と、日々の不安と美しくない日本だ、という事なんでしょう。ひとつ加えると、うちの目の前も道路ですが夏はアスファルトはとても熱くなりますので、暑くてたまらないし、地球温暖化を間違いなく促進しているはずなので、もしアスファルトがすべて土になったり、本当はもう少しお金をだせば透水アスファルトなんてのもあり熱くなりにくいのでベターなのですが、上記の通り、道路はできるだけ安く沢山つくることによって庶民も乗れる環境をつくって来たので、それは採用されない、という事になるのでしょう。

Imagine there’s no cars….と歌ってみたくもなりますが、間違いなくその方が人間は幸せだったと、僕は信じています。

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On 10月 25, 2014
by hase
in みるーよむーかんがえる

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