破戒

  • 2012.02.13
  • BLOG


むかーし読んだはずなんだけど話の筋も覚えて無かったくらいでしたが、とても良かったです。
被差別部落出身を隠し、教師として生きてきた主人公が、非差別部落出身と公言する運動家や優しい人々に接し、その運動家が凶弾に倒れる中、自らも公言しその運動家の遺志をを継ごうとする。
多分、運動家の妻が主人公に言った言葉、あなたは非差別だという事をいい訳にしている、というのが彼を決心させたように思ったのですが、いろんな場面でも同じことがあるなあと。
僕は〜〜だから、私は〜〜だから、と自分の中でやらない事に対するいい訳をして、本当は変えたい、やりたい何かをしない自分、というのは99%以上の人間は否定できないんじゃないかと思います。
そして彼は公言することで、そのいい訳が出来ないように自分を追い込んだし、また解き放った。
また、運動家の妻が、誰もがいつまでもそんな差別的な意識を持ち続けるわけじゃないと言い、そして彼が東京へ旅立つとき、教え子たちが追いかけてきて、その1人の母がゆで卵を彼にと用意した。つまり被害者意識はまわりが全て敵だと思わせるけど、決してそんなことはないのだと。
さまざまな差別や抑圧や不自由や不平等は、確かにあるけれど、でも自分でより増幅させてしまっているのだから自ら乗り越える事もできるのだと、勇気を出そうと。
文学作品が映画化されたものの中には退屈なのもありますが、これは良かったです。