長谷守保 建築計画

東京中央郵便局


今、鳩山総務大臣の言動で話題になっている東京中央郵便局ですが、政治的側面は置いておいて、建築的な側面で。。
1933年に吉田鉄郎の設計でつくられたのですが、とても端正で、日本らしいとも言えるプロポーションでつくられているのですが、現代の喧噪の時代には、「地味」としか感じられない面があるのは否定できないと思います。
日本建築学会が「重要文化財をはるかに超える価値がある」との見解を出したとの事ですが、せっかく珍しく建築が世間の話題になっているのですから「文化財」というモノサシではなく、本当はどんな価値があるのかを発信して欲しかったと思ったりもしました。
文化財、もっと大きな話で言えば、世界遺産みたいなものって、一体どんな存在なんでしょうか??
どちらにしても、いろいろな自由にできなくなる様々な制約ができてしまう反面で、価値があるものとしてのお墨付きが得られる、というのは政治的、経済的などなどの事実だとは思いますが、本質ではないと思います。
多分、人間というのは、自分の人生なんてはかなく散ってゆくのだと思っているから、古今東西、いつまでも変わらぬものへの想い、憧れというものがあるんだと思いますし、それが、世界遺産や文化財というものを成立させている人間の本質的欲求なんだと思います。
話を戻して東京中央郵便局に対して、そんな想いを抱く人間がどれだけいるのか??建築関係者は確かに客観的に価値は述べるけれど気持ちとして、「変わらぬものへの想い」までの感情を持って発言しているかと言えば否だと思います。
確かに言われている通り、近代建築というのは、まだ評価がはっきりしていない中で取り壊れ始めている中では、保存に対する機運を高めなければ取り返しがつかない!というのは一理ですが、でも、70年以上も、多くの人目に触れてきたにもかからわず、一般市民からの素直な感情として保存の声が上がらないというのは、どういう事なんだろうかと思います。
はっきり言えば、建築をつくる専門家側と、一般市民側の価値観の乖離であって、その溝を埋めようとする努力なしには、今回の問題も、それによって必要とされた何十億の追加費用も、無駄に終わるだけだと思います。
僕は、鳩山さんの「トキを焼き鳥」発言に関しても、なぜトキが特別扱いされるべきなのかが、本当は誰も答えられないんじゃないか?と思います。
生態系バランスを持ち出すには全くと言っていいほどもう無力な存在なんだから、ただ人間が「珍しい」と思う興味本位で延命を強いているだけじゃないかと思いますし、建築や文化財の本当の意味が分かっていないからこそ、トキの比喩をしたんじゃないかと感じました。
建築の価値を共有し、永く愛され残すべき建築をつくり、後世に伝えてゆくことはとても大切だと思いますが、トキもニワトリも鳥は鳥。頂く時には感謝すべきですが、人間が絶滅に追いやりかけた償いだとしたら、単なる自己満足じゃないかなと思います。

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On 3月 13, 2009
by hase
in けんちくーかんがえる

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