新建築7月/山本理顕さん

  • 2008.07.03
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福生市庁舎です。
表紙を見て、まさか山本理顕さんとは思いませんでしたが、建築家は変節もあり、もちろん様々な状況の中での表現の幅ももちろんありますが、大きな変節をされたのかなあと感じました。
今までつくられて来たものは、「システム」という概念がとても強く、別の言葉で言うなら、その「地」でなくてもいいような、その「人びと」でない人びとが使ってもいいような、というような、もちろん建築たるもの人間のために考えられるものですが、近くの人びとではなく、遠くかなたの人  びとを考えながらつくっているような結果、ちょっと冷たい、親しみのわきにくい表現だったりしたと思います。
一方でこの市庁舎は、「開かれた」「親しみのある」ものを目指したと、インタビューにもあり、またコンペで通りながら、町長の交代によって反古にされた「邑楽町役場」が「システムに特化してしまった、、、、こんなに楽しい建築ができるんだよ、という伝え方をもっとするべきだったのかもしれません」と述べられているように、邑楽町での一件(上記の件で、結構な裁判をしていたようです)が、今回の変節につながっているのは間違いないように感じます。
建築には大きく二つの発想があると思います。
一つは、まだ見ぬ人たち、まだ見ぬ社会に向けて、不完全さが残るのは了解のもとで、チャレンジをするようなやり方。
もう一つは、目の前にある環境、人たちの為に、「ベスト」と思えるものを、今できる限りを尽くしてつくるようなやり方。
もちろんどちらも大切な事なのですが、背反することこが多く、完全な両立はできません。
この庁舎は、後者への第一歩なのか、ちょっと寄り道でまた前者に戻るのか。。
こんな事を考えながら建築家のつくるものを見てゆくのも面白いものです。