新建築11月

  • 2012.11.07
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東京駅!
過去の経緯を余り知りませんでしたが、1958年には全面建替計画もあり、建築学会の保存要望書提出、そして国鉄の分割民営化があったことからJR東日本が駅を資産として大切にしようと考え始めたりした結果として今回の保存復原工事に至ったようです。
日本のシンボル的存在でもあり、随分多くの建築専門家等が議論を交わしてきながら、もちろん当事者としてのJRの意向も含め実施されてきたようですが、免震構造を採用しなければとても実現できなかっただろう反面、見えないところで、随分な工事(地下の既存松杭を撤去し、地下空間をつくり、杭新設)を、営業をしながら実現したというのは、さすが東京駅だったからこそ可能だったのかもしれません。
建築の保存、というのは多面的で、そのまま残すべきか、現代に合わせるべきか、不便のままでよいのか、かといってどこまで改変してしまってよいのか?というジレンマがあるわけですが、「インテグリティ(一体性、統合性)」というキーワードがその方向付けをしてくれたそうです。
そして、もちろんオリジナルや、戦災の爪痕を残す一方、新しい要素も入っています。
ところで、以前、様々な形で古い建築の保存に関わりながら考えたのは、保存の価値というのは、「記憶を繋ぐ」事にあって、本来人間って記憶にすがりついて生きている存在だから、その記憶を繋ぐ事というのはとても大切で、だから経済性の問題と全く違う次元に保存の意義はあるんだな、という事です。
東京駅には、とある大切な記憶があります。
だから、僕があと何十年生きられるか分かりませんが、生きている間だけでも存在してくれたら、訪れるたびにその記憶を呼び戻し、自分の存在を確かめる事ができます。
自分の故郷が、しばらくぶりに帰ったら、全く見る影もなく変わってしまったとしたら、それはとても悲しい事だし、自分のその頃の記憶にぽっかりと穴があいてしまいます。
実は僕が子供のころ育った地域は区画整理でそうなってしまっていますし、そこに行っても何も思い出す事は出来ないし,とても悲しく思います。
僕は今は保存にはほとんど関わることもないですが、でも今つくるものは、少しでも長く存在して、みなさんの記憶を繋ぎ、皆さんが自分自身の存在を実感できるために少しでも役立てばと願っています。