長谷守保 建築計画

愛知県立芸術大学/吉村順三さん



以前少し立ち寄った時は寒くてちょっと見たくらいだったけれど、見学会+シンポジウムのような企画があったので行って来ました。
40年程経ち、そろそろ老朽化などで建替えの話もあるようで、このような良質な近代建築を残さなければならないとう建築の世界からの動きもされているようですが、やはり40年の年月、ろくなメンテナンスもされなかったという事で、傷みもあり、どうなる事か、という感じです。
この写真はキャンパスの背骨とも言える講義棟と左右の芸術学部、音楽学部をつなぐ廊下ですが、解説でもありましたがこの廊下の屋根の線の細さというのが全体のランドスケープを壊さずに伸びやかさを出しています。元の丘陵地の自然地形を出来る限り生かし、それぞれの建物を地形に合わせて散在させているのが特徴であり、その中でこの講義棟(写真では分かりませんが実はすごく長く大きいのです)とこの廊下、というか全体の配置、そして緑豊かな地形がこのキャンパスのとても良質な骨格となっています。自然に囲まれながら、自然光の中で、伸び伸びと発想を広げ、質の高い作品を目指す事ができるという環境は本当に望ましい姿だと感じましたし、建築ではなく学生が主役であるような在り方は、吉村さんらしい、優しさに満ちた設計であったと思います。
またそれは当時の愛知県知事のリーダーシップによるものだったそうで、設計者云々以前に、発注者がいかに強い思いと責任の中で発意するべきかという事を思いました(今はそんな政治家はおらん)


それぞれに散在する建築は、用途や選択された構造形式によって様々な特徴があり、工事も難儀したようで、雨漏りも結構あったようですが、それも芸術大学には相応しい選択だったと思います。一方で、このような吉村さんらしいものもあり、きちんと大きな屋根がかかっているために、他の建物にくらべて傷みも少なかったですし、良い建築でした。

これは奏楽堂という大きなホールの入り口部分ですが、大きな空間をつくる為に、折板構造とした上に様々な工夫をしたところがそのままデザインとして現れています。
近代建築の特徴でもありますが、構造形式がそのままデザインとなっていますが、音楽や創作に相応しい空間をそれぞれの多様な構造形式で表現することによって、造形的にもとても多様なキャンパスになっていますが、自然の中にとけ込む事で、その多様さが嫌らしくもなく、逆に自然の一部になっているようにも思います(自然も多様なのですから当然と言えば、)
今回改めて考えさせられた事。
建築の価値というものが、教育も理解も共有もされておらず、結果質の高い建築を社会が求めず、また出来てしまえばメンテナンスは厭われ、結果痛んできたら建替えれば良いと思われているのが現状。
でもこの大学のように発注者、設計者が思いを込めれば、実際利用者はとても愛着を持っていて、それこそが建築の価値だと思うし、建築を永く存在させ、また新たな価値ある建築を生み出す原動力になるのだと。そしてその価値は、モノとしての建築ではなく、人間を中心に考えた、愛情をもってつくられた建築にのみ生まれるのだと、そんな事を思いました。

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On 6月 13, 2010
by hase
in けんちくーみる

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