長谷守保 建築計画

建築を考えるーペーター・ツムトア


ピーター・ズントーと普段呼ばれていますがそれは英語読みのようです。一流の建築家の文章としては珍しく?小難しくなく、感性の重要さを前面に出していて、僕的には好きというかこれがあるべき姿のように思いました。
またハイデガーで恐縮ですが、「建てる、住む,考える」を引きつつ「私たちは決して抽象的な世界の中に生きる事はできない、そうではなくて、たとえ思考するときであれ、つねに物の世界の中にいるのだーーということだと私は理解している。」「ハイデガーのように、住むという概念を、場所や空間の中で生きる事、考えることとして広くとらえてみたとき、この概念は建築家としての私にとって、現実とは何かを的確に示してくれる。」
ここを理解できればズントーの基本的なスタンスは理解出来るように思うから、皆さんにも是非ハイデガーを読んでいただきたいw
あと「美」について。今まで黄金比のような論理的な面でしか主に捉えられてこなかったというか、主観的な面が強いから言及を避けられて来たように思うけど、結構触れられていて興味深かった。
「欠如から生まれる時、美はもっとも強烈な輝きを放つ。私の中の欠如。美の体験としてまっすぐ私を打つ強烈な表現や感情・・・。」
次に都市と風景の違いについて「都市は私を刺激する、ないし興奮させる。私を大きく、あるいは小さくする、自意識を持たせ、誇りを持たせ、興味を抱かせ、わくわくさせ、いらだたせ、怒らせ、あるいは怖じ気づかせる。対するに自然の風景は私がそこに向かって心を開きさえすれば、自由と安らぎを与えてくれる。なぜなら、自然には都市とは異なる時間感覚があるからだ。風景において時間は壮大である。一方都市では、空間同様、時間も凝縮されている。」
と、ここは僕はとても大切な部分だと思うし、似たような事を思って来ました。人工的なものは「刺激」という面で様々な魅力も生んではいても「刺激」が無いということで私たちに安らぎを与える自然とは基本的に逆な方向の意味を私たちに与えるのだろうしそれを自覚して建築を考えないといけないし、建築にも、もちろん刺激が必要なこともあれば安らぎを求めるべきときもあるのだという事だと思います。
そしてまた美についてですが「人間の仕事が自然に、つまり大地や植物や動物に配慮したものになっているとき、私たちは自然がいかに大地に依存しているかを感じ、そして同時に、風景を眺めるときに美しいと感じるこころの淵源がここにあることをうっすらと理解するのだ。」と。つまり人口のものでも「自分たち人間が生きた自然の一部であり自然からやってきて、自然の中に還って行くのだ、と感得」する事によって美しい、と感じるものに始めてなりうる、という事でしょう。
まあこんな事は
それなりに、僕も含めて、多くの人が思ってはいるし、そうあるべきだと思っているんでしょうけれど、建築、という実践を最高のレベルで行なって来た建築家だからその言葉も素直に耳に入るのかもしれません。
ただ僕として気になっているのは、そんな気持ちをもって設計をしてくとも、今の都市と経済の原理というのは、建物を無闇に高層化して、巨大化して結果、構造的、防火的、防災的な制約を増やし、その結果またコスト的な制約も大きくしてしまうことによって、そんな素朴な「美」を志すスタンスを吹き飛ばしてしまっているのではないかということで、それもあって、木造住宅というこじんまりとした建築はまだ「美」というものを素朴に考えられる余地が残っていて良いなあと思ってもいます。

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On 2月 24, 2013
by hase
in けんちくーよむ

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