長谷守保 建築計画

建築について話してみよう/西沢立衛さん


雑誌などに書かれていた文章もあったり、一昨年講演会を聞いたりで、ある程度既読感のある感じでしたが、でも若い世代では間違いなく一番の建築家なので、改めて読んでみました。
大学時代には余り建築に興味がなく、たまたま設計課題をゲーム的に取り組んでみたら面白くて、それが高じて建築家を目指した、というようなあたり、たしかに(僕より5つ位上の)あの世代くらいだと、ポストモダンの学生には訳が分かりにくい状況で、余り状況に流されず、先入観なく建築を志したというのは、自分なりに建築を考える上では良かったんだと思います。
西沢さんは「新しい時代の建築の姿はなにか」を考えてこられていて、「新しい設計の仕事というのは、新しいものを考えることができるチャンス」というスタンスで設計をしてきているのですが、新しさと同じくらい古さという事が重要で、ある問題が本当に古いのであれば、それは何百年に渡って人々に共有されてきたものであり、今後長期間共有されるだけの価値があるから、とも考えています。
そして、見方とか読み方は自分で創造しなければいけないものだと言いつつも、もっと素朴に原始人が眺めるように建物を眺めるべきだ、とも言っています。
このあたりのスタンスは、青木淳さんととても良く似ていると思いますが、本当に当然と言えば当然の事だとも言えますし、今まで歴史上重要な建築やその他文化も含め、そのスタンスで生み出されたものこそが評価され、残って来ていると言えると思います。
逆に言うと、そのスタンスで創作ができなくなってしまっているのは何故でしょう?
西沢さんは「nLDKタイプの平面というのは、マンガに似ている」と書いていて、リビングやダインニング、キッチンというのが、生活をコマ割のように分断してしまっていて、生活のシーンがつながったり、新しい活動が生まれたりということが起こりにくいプログラムタイプというものが出来てしまっていることが、新しい住宅を生むことを阻害していると言えます。
リビングとかダイニングとか言った名前が、その空間の使われ方を限定してしまっていますが、実際は、それらの空間を違う使い方もできるわけですし、その空間の可能性を切り落としてしまっているとも言えます。
そんな中で、西沢さんは、他の空間では決して代理できないような個性なり特性、状態を持つような、「名前を要求するような空間」をつくりたいと言っています。
少し分かりにくく漠然とした表現ですが、なにか具体的で限定的な使われ方を前提としてつくられた空間(リビングのように)ではなく、ある空間の質を生み出す事によって、人々が集い、何かが始まるような「質」をもった空間、という意味だと思います。
「人間の想像力の豊かさがのびやかに表れた建築や都市というものは本当に魅力的」なのですが、それを制限してしまうのは、経済的、効率的、機能的などを目指す上で生まれてしまった「手段」なんだと思います。人間が豊かに生きるのが当然のように「目的」なのに、それを実現するための手段が目的を抑制するという、おかしな事が全てを支配しているように思います。
手段に翻弄させれず、目的を目指して少しでも高く登れればいいですよね。

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On 1月 13, 2008
by hase
in けんちくーよむ

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