長谷守保 建築計画

小林秀雄対談集



ご存知なところでは坂口安吾や三島由紀夫などたぶん好き嫌いのはっきりしていた小林秀雄も対談を望んだ相手ばかりだったのじゃないかと思うので,結果多彩かつ深く踏込んだ、濃厚な対談集でした。
そしてやっぱり小林が批評をしてきた「小説」のあるべき姿が節々に語られていたように思うのですが、その前に小林が小説を書けなくなった理由は、「例えば恋愛をすると滅茶滅茶になっちゃったんだよ。こんな滅茶滅茶な恋愛は小説にならねえから」という意味で「人生観の形式を喪った」からと語っているのだが、若い頃は色々あったらしいしw。
まず思い起こさないといけないのは、小説、という形式は海外では詩の下にあり確信的な機運は詩が担って来たが、日本ではそれを輸入された小説が担う事になったために、それが純文学となり、大衆文学と烈しく対立した、らしい。そして映画の登場による影響。「カメラのメカニズムが、どんなに威力を発揮しても、やはり出来ないことはできないのだから。カメラに圧倒されて,自分から進んで考えたり感じたりする事ができないという不満はどうしてもあるでしょう。文学の価値というのは、そこにあると思うのです」と。もう60年前の対談ですが、この傾向は強まるばかりですが文学の価値はどこまで守ろうとされているのでしょうか。。
また何カ所でか「フォーム」という言葉が使われていています。
「芸術というのは結局フォームだ。。。作品は形だ、黙っている形だ、言葉ではどうにもならない意味が確かにそこにあって、それが沈黙の声として言葉にならぬ言葉として伝わってくる。そんな事は美学のいろはなのだが、私たち現代人は、このいろはについて実に鈍感になってしまっている」
同世代の建築家のルイス・カーンも、フォームと沈黙などを主要概念としていたけれど、あの時代にはそれが「いろは」だったのかどうかは分からないけれど、いろはであるべき大切な事だと思います。多少補足になるか、文学者に一番大切な事というか、本質な事とは?と問われて「トーンをこしらえること」と答えるのだけど、この作家のものだ、と安心して読んで、見ていられるような、フォームともつながっているものではないかと思う。
概念的なので、少し分かりやすく、、「ジタバタしているうちに水に慣れるんだ。だから海の水に慣れるように,美しい形というものには慣れなければダメなんだ。だから美しい形の海でもって人間は泳がなければいけない。そうしなければ形なんてものは分かるもんじゃないんだよ。そういうものが現代にはないだろう。ないですよ。」もうひとつ「さわるという感覚は、生物に一番基本的な感覚なのです。進化論的にはアベーバ以来のに。現代はこの感覚が文化の上で衰弱した時代と考えられないかね。さわるというのが一番沈黙した感覚なのです。ぼくが物を見るというのも、さわるように見るという意味なんです。現代はおしゃべりの世紀なんだ。だからいったん黙ると、狂人のように行動するだけだ。」
と引用の継ぎはぎだけど何か大切なことが伝わって、いや考えさせられませんか。
対談集だから特に考えていることを率直に語っているからか、僕にはとても濃厚で栄養たっぷりでした。

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On 8月 13, 2013
by hase
in みるーよむーかんがえる

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