長谷守保 建築計画

対称性人類学/中沢新一

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中沢新一さん。何となく近づきがたいイメージで、多分初めて読むにしてはシリーズ5冊(古書ですが)まとめ買いしまして、でも思考回路が似ているようでとてもスーッと読めましたが、はじめに、レヴィ=ストロースの「野生の思考」に対するオマージュが述べられていまして、僕もそれは人類にとって最も重要な書の一つだと思っていました。逆にそれが理解できない方には、なんのこっちゃかもしれません。

レヴィ=ストロースが発見したのは、未開の地の原始的な生活の中に、近代文明とは全く違うけれど、すごく奥深い文化があるということでしたが、それが「対称性」つまり人間も動物も、生も死も、決して非連続なものではなくメビウスの輪のようなものであるという認識から行動が組み立てられていて、実は仏教もそうであるんだけれど、それは人の持つ「流動的知性」つまり脳の各部が別々に機能するのでなく、横断的に、全体的に働くことによって生まれた「心」によるものであり、だからそこから生まれた神話は上記のメビウスの輪的な構造を必ず持っている、ということです。また我々の祖先より大きな脳を持っていたけれど滅びてしまったネアンデルタール人は、おそらく脳をそのように横断的に使うことができなかった為に、道具は使ったけど、ラスコー洞窟のような芸術は持てなかった、というのも理解のできるところでした。

西欧から発して世界を覆ってしまった「非対称的」な世界は、「一神教」「国民国家」「資本主義」「科学」が結合されることによって生まれてきましたが、そこには上記のメビウスの輪は排除され、全てが合理的に説明されますが、でも「心」は今後いくら科学が発展しても説明できなさそうだと考えると、私たちの心は科学で自然を征しようとなんて思ってなくて、自然と溶け合って生きて行くことを望んでいると分かります。だから詩や音楽や芸術は心には欠かせないものなんですよね。

そういえば今トランプさんの名前を見ない日はありませんが、経済って一体何なんでしょう?対称性の時代では貨幣もなく、交換、という概念もなく一方的にみえる「贈与」やお祭りのように一気に浪費をしてしまうような流れが彼らの経済?だったようですが、今の世の中は全て数値化できる「貨幣」がそれと同価とされる「商品」と「交換」されることによって成り立っていますよね。でもその交換は、理性的なマインドによって停滞もしますから、時に「恐慌」や「不景気」も起こりますが、「贈与」と言ってもなんだかんだ見返りを求める(お歳暮みたいな)ものでなく、誰のためかもわからないけどバラまく、的な「純粋贈与」が新たな価値を生んだりもする、というのは分かりにくいかもしれませんが、お金が余っている方や企業がそんなことをしてくれさえすれば、あっという間に景気は良くでしょうねwつまり今の交換経済というのは損得勘定でしか動かないから停滞もすれば、不平等も進むばかり、ということですね。

また「無意識」というのは「流動性知性」「心」とほぼ重なる概念だと思いますが、著者は「無」ではないし、全てはそこから生まれてくる場だから、フロイトが無意識を発見したことは、人類にとって最も重要だったにもかかわらず、「意識(合理的に把握できるもの)」が支配する現代の非対称な世界は無意識を無視しようとしているようにおもいますし、中沢さんもそこを何とか乗り越えるために「対称性人類学」を唱えていますし、僕も似たような事を考え続けてきたので、本当にその通りと思います。だから動物「保護」や地球環境「保護」というツケ上がった考え方は大嫌いだし、だから一方で保護しながら、一方で平気で破壊を続けてる訳ですし、対称性の、つまり動物も人間も連続したものだという意識があれば知性のある動物や可愛い動物を優先して保護してみたり、まだ使えるものを捨てて高性能のエコやらをどんどん買わせることで地球のため、なんて発想はしないんだと思います。

でも著者も言うように生活は恐ろしく変わりつつありますが脳の構造がすぐには変わらないので、私たちには自然を美しいと感じたり、むやみに生き物を殺してはいけないと思ったりする「心」を持ち続けることができますので、そんな心、無意識、と改めて向かい合いながら、自然とまた少しでも融合する努力を続けないといけないですし、キリスト教徒より仏教に近い私たちはずっとたやすくそれを成し遂げられる、と自覚を持って、「トランプ(彼のやり方は嫌いではないが)」に踊らされないようにしてゆきたいものだと思います。

 

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On 1月 25, 2017
by hase
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