長谷守保 建築計画

失われた名前

コロンビア(辺りで)5歳(頃に)誘拐され何故かジャングルに放置され、やむなくサルと過ごし、10歳(頃?)人間の世界に戻って今は孫もいるようなマリーナ(後で自分で付けた名前)の娘が聞いた話をゴーストライターがまとめた本ですが、とてもとても面白かった。

まあ面白くなるように脚色はされていて当然だけどベースは真実だし、恐らく5歳から10歳頃にサルといたというのがある意味とても良いタイミングというか、もう少し幼ければ生きてゆけずまた人間であったというベースも得られていず、10歳よりもっとサルといてしまったら人間の生活には戻れなかったのでは?という意味で絶妙な期間だったんじゃないかと、僕は思いました。でも彼女が人間社会に戻ったのも結局は偶然出会った人間にどうしてもついてゆきたい衝動が抑えられなかったというから、それが人間の本性なのか5歳までに受けた感情からなのか?

昨日のカフカのはサルが人間に捕まって、人間の能力を備えてしまうけれど人間という存在には何も満足していない、という感じでしたが、このマリーナも同じような感じで、やっぱりジャングルという本当に日々「生きている」という環境でサルという実はとてもお互い親しく生きていた生活が本当は一番心地よいというか望ましいと感じ続けているようなあたり、つまり、人間が一番だと人間は思い込んでいるけれど本当はつまらない事や辛い事がいっぱいなだけじゃない?という事だと思います。
そんな事が感じられるような引用をいくつか。

「若いサルたちの中でとりわけよく一緒にすごしたのはルディとロミオ、そしてミアだった。当然ながら名前という概念を持たなかった当時に名づけたものではない」と、人間は恐らく名付ける事によってより多くのものを見分ける事ができるようになったかもしれないけど、その代わりそれぞれの特質で見分ける能力が退化して単に名前で見分けるクセがついてしまっているのではないか?

「荷台が開いた途端、恐ろしい早さで通り過ぎていく車のライトに目がくらんだ.私は『スピード』が嫌いだった。動物の世界では、スピードは命の危険を意味したからだ。」と人間だって本当はそうなのかも。特に高齢者なんてこのスピードについてゆけないから認知症やらになる?なんてちょっと聞いた事があるような。

半分獣のようなマリーナは、半分奴隷のように扱われてきたけれど、頑張って人間らしく生きようと(本当はそうしたいと思っていなかったけど)思ったのは、いくつかの心優しい人間との出会いがあったからだし、それがなかったら盗みをしながら路上で生活して(実際していた)そのまま大きくなってしまったのだろうから、心の触れ合いというのが人間を動かす最大の原動力なんだろうなと思いますし、書ききれないけれど、マリーナがみたサルたちの暮らしというのがとても幸せ(とサルが思っているかは別として)なものだと感じました。

興味ない方もいるかもしれませんが何となく興味を持たれたなら、是非読んでみて下さい。

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On 6月 7, 2014
by hase
in みるーよむーかんがえる

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