博士の愛した数式

  • 2013.05.13
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とてもとても良かったです。
引き続き映画化したDVDも観まして、良かったですがやはり時間を圧縮せざるを得ないからか何となく本と違って、せっかくの深い内容なのにじっくり味わえなかった感じがしました。
また映画の方は男女の愛情を少し強く表現していて、まあ映画だから仕方なかったんだろうけど、原作はあくまで数学への愛がテーマなので違和感もありました。
有望な数学者が事故に遭い、それ以降は80分しか記憶が保てなくなってしまうのですが、そこに家政婦に来た女性と父親のいない息子の3人の間の温かいストーリーですが、数学の奥深さ,面白さをとても良く表現していて、色々と考えさせられました。
数学専門誌の懸賞で賞を取っても「一度集結させた証明については驚く程淡白だ。あらん限りの愛情を傾けた対象が真実の姿を現し、こちらを振り向いてくれた途端、慎み深く、無口になる」そして博士の言葉「僕は別に喜びたくはないんだよ。僕がやったのは、神様の手帳をのぞき見して、ちょっとそれを書き写しただけのことで、、」
また「彼の心の根底にはいつも、自分はこんな小さい存在でしかないのに、、という思いが流れていた」ので、ほんの些細な事にすごく感謝をしたり、ちょっとした事をすごく誉めたりもした。
こういう「神様」って考え方はとても好きだ。
もちろんその神様は祈る対象でも願いを叶えてくれる存在でもなく、ただ手の届かない高みに時々現れ、進むべき道をほんの少しだけ示してくれたりもする。
最近、陶器に少しハマりかかっているのですがw、現代作家のものはほとんど良いと思えず、かなり昔に誰がつくったか分からないものの中にとても美しく惹かれるものを見つけるのですが、多分それもその作者が「神様の手帳をのぞき見」できたからじゃないかと思うし、建築も、音楽も、文学も、恐らく本当に優れたものの本質はそこにあるんじゃないかと思います。
子供の頃に博士みたいな人と出会えていたらどんなによかっただろう。
それは無かったけれど、少しでも博士みたいに生きて、何かを伝えられるような大人になろう。