長谷守保 建築計画

アキレスと亀

今朝、小林秀雄の「様々な意匠」という初期の作品集を読んでいたら、書評?のタイトルで「アシルと亀の子」(フランス語読みだとそうらしい)を使っていて、ふと北野武監督の映画を思い出し借りました。

足の速いアキレスも微分的に分析的に考えると足の遅い亀をいつまでも追い越せないというパラドックス?なのですが、現代アートは何だかコンセプトみたいなものを考えないと売れないというある種のパラドックス?とひっかけてつくられた映画らしい。

出てくる絵たちはみんな武ちゃんが描いたらしいのは少しやり過ぎに見え、ちょっと軽い乗りで大きなテーマを扱い過ぎに見えてしまったけど、確かにアートを志して人生を棒に振った方々も数えきれないんでしょうから考えさせられる所も多かったし、笑えました。

でもそうは言っても、監督!あなたがつくっている映画だってアートと同じパラドックス?にはまっているくらいは自覚されているとは思うけど、同じ映画を無名な監督が撮ったって見向きされない、というのは建築でも多少あるかもしれないけれど、アートや映画、作者によって金銭価値が違うもの程大きいんでしょうね。

小林秀雄の話に戻ると、20歳代書いていたものはまあ肩肘張った感じだったけれど何しろ勢いと知識量で周りを圧倒していたようで、坂口安吾曰くは「教祖」だと。
確かに難しい事を断定的に、そして権威も頭から否定する勢いで並べ立てられると誰も何も言えなくなるんだけど、でもその権威を否定している中でとても本質的な言葉も吐いていて、そこはスゴイなと思う。

例えば、人間は軍人にも小説家にも何にでもなれるけれど「彼」以外にはなれないのだ。そして「この人間存在の厳然たる真実は、あらゆる最上芸術家は身を以て製作するという単純な強力な一理由によって、彼に移入され、彼の作品の性格をこしらえている」と。

1929年の言葉ですが、まだ、そんな風に最上の芸術がつくり得た時代だったんでしょうけれど、これも死語状態なんでしょうかねえ。。

つまり、何かを企てて実現するのではなくて、自分と渾然一体となった経験やら環境やらの全てをただぶつける事というか、頭でなく心というか魂でつくるというか、僕もそんな風にありたいとは思ってはいますがなかなか難しい時代なんだと思います。

だから、観る方も、頭で観るんじゃなくて、心や魂で観る、というのも難しいけれどそうする事によって初めて最上のものがやっと見えてくるという事なんだと思います。

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On 1月 26, 2014
by hase
in みるーよむーかんがえる

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