長谷守保 建築計画

「澄まう」こと

情報が溢れ、それに負けないように発信せざるを得ないために何が大切かを見失うような時代に、なんか違うなあと思うことばかりが続いていた中で、自分は何を目指したいのかを一言でまとめられたらと思いました。

今は住宅の仕事が多いこともありますが、経済の道具である商業施設系は別として文化施設医療施設なども基本的に人間の心身の落ち着きを守るためにあると思っていますので、目指すべき本質は変わらないと思います。
前から思っているので書いたりしたこともありますが、「住む」「澄む」「済む」などは漢字で分けられるまでは同じ音で同じ根っこの言葉であるというのは確かなことかと思ます。
ですから、「住む」を考える前に「すむ」の本質を考えますと、基本的にそれは「澄む」の今日的な意味に残っているように思います。
「澄む」
水や空気などに濁り(にごり)がなくなり、透きとおった状態になる。
光や色などに曇りがなく、はっきり見える。
音がさえてよく響く。
心配や邪念がなく、心がすっきりしている
雑音がおさまって静かになる。
物事の筋道がはっきりする。道理が明らかになる。
つまり、泥水を入れたコップが、時間と共に透き通ってくる様、というか、そしてそれが終われば「済む」で、「住む」は一つのところに落ち着くという意味で共通してくると思います。
また、日本の古典文学には、「済む」と「住む」を掛け言葉として使う文化もあったようです。
そんなことを考えながら、この家に10年以上住んで日々様々なことを感じながら、住宅というのは、物理的な意味での落ち着く場所、というものだけでなく、心が澄み渡り、真理が感じられるような場所であるべきだと思ってきました。ということで、「住む」でなく「澄む」という字を使うことで伝えたいと思ったのですが、一方で「住まう」という言葉も耳にしますのでその違いを調べてみました。

「住む」は行為全体をまとめて一つの言葉で表現する。

「住まう」は「住む」という行為を継続する状態・経過を表現する。( 住む→住まふ )

同様に、「向く→向かふ 」「計る→計らふ 」「語る→語らふ 」「佇む→佇まひ 」を見ればイメージがつくかと思います。
そして、住宅というのは行為を継続する場ですから、その意味も含め「澄まう」という、造語ですが、考えてみました。
長ったらしい説明をした上だから「一言」じゃないじゃないか、と言われそうですが、「澄まう」という文字と響きだけでも伝わると信じています。
時間の経過の中で、心と体が次第に落ち着き、大切なことが感じられるようになり、心身がとても健やかな状態になる。そんな住宅、建築を目指さなければ、と思います。
そしてそれは決して、人間の浅知恵や流行から生まれる軽薄なものではなく、大きな「自然」に耳を「澄まして」感じることからしか始まらないと思います。

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On 6月 30, 2021
by hase
in BLOG, けんちくーかんがえる

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