新建築12月/妹島さん

  • 2008.12.07
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妹島和世さんの大倉山の集合住宅です。
模型などは見ていましたが、とても抽象的な模型から、実体化した時の落差が大きい事が多い中で、さすがに模型で感じていた良さが実体化しても感じられました。
「低容積で良いこの計画で、都市と関係を持てる屋外生活を楽しめる賃貸集合住宅をつくろうと考えた」というスタート地点から、延々とボリュームスタディを行い、結果「屋内と屋外が流動的に混ざり合うボリュームができ上がった。という事で、出来てから「柔らかに切られたそれぞれの住宅のための空地に、徐々に多様な生活があふれてきて、そして、あいまいに繋がって、緑と屋外生活と屋内生活とが混ざり合ったひとつの集合住宅という環境ができ上がったらいいなあと思う」と考えられたそうです。
妹島さんや西沢立衛さんの建築のつくり方をみていると、何らかの方向性をもったルールがあって、試行錯誤する中から最適解に辿り着く、というように見えて、例えると、樹木っていうのは同じ樹木でも広い所に1本なのか、生け垣のように密植なのか、などによって自らの成長を模索し、それぞれの形に落ち着くんだけど、もちろんそれぞれに枝葉ぶりとしての美しさをもっている、みたいな、そんなように思います。
ただ、この大胆な形状は、賃貸住宅として、住む側が自らこの環境を好み、住み、そして離れる事もできる、という前提のもとに成り立っていると言わざるを得ず、「終の住処」とはなり得ないでしょうけれど、間違いなく社会の一部として求められる空間かなとも思います。
ただ、最初にも書いたように、模型でのイメージをいかに実体として実現するか、がとても大切なところであり、大変なエネルギーが必要なところであり、それが出来ない設計者には真似することは許されず、結果も望まれないものになるでしょうね。
思い切り開くことができるような良い環境に恵まれた住宅も大変魅力的で、つくってきましたが、僕も最近、都市の中でいかに環境から閉じずに都市を楽しんで生活できるかという事を考えていますし、自分もそんな風に生きたいとちょっと思っています。