サピエンス全史

  • 2016.10.15
  • BLOG

51msnnvzg7l-_sx336_bo1204203200_

これはとても重要な歴史の本だと思います。でも学校では単なる史実の羅列しか教えてくれないけど、本当に大切なのはその中の因果関係。そして特に大切なのは、何故人間が人間になったのか?そしてそれは人間にとって幸せな事だったのか?だと思うし、本書はそこを描いてくれてます。是非おすすめです。
そして著者は「歴史を研究するのは、未来を知るためではなく、視野を広げ、現在の私たちの状況は自然なものでも必然的なものでもなく、したがって私たちの目の前には、想像しているよりもずっと多くの可能性があることを理解するためなのだ」と。本当にそう思う。
でも、キリスト教的な思想の結果なのか、人間は進化の極みだから、もし宇宙人が居たら人間のように(もしくは更に)知的で技術を持っていると勝手に思い込んでいるし、今ではかなり無くなったにせよ、白人は黒人より優れていると信じ込まれて来たけど、本書にもあるように、何かが少し違ったら、そもそも人間/サピエンスは生まれてなかったかもしれないし、黒人が、仏教が世界を握っていたかもしれないのである。
まずは何が人間を人間たらしめたのか?他の動物でも目の前に居る同じ群れは守るけど、同じライオンでも他の群れとは殺しあうように、動物はある範囲でしか仲間意識を持ち得ないけど、人間は会った事もない人たちと、同じ日本人だからといって、募金をしたり仲間意識を持つし、それがローマ帝国のようなものをつくったし、人類愛もそうだけど、そんなもの人間しか持ち得ない。そのくらいは良く理解されている事だけど、著者はそれを「虚構」によるものだと括ったし、そこは本当にナルホド、と思った。虚構とは、みんながそれを信じているから存在しているだけのもので、もしその記憶が飛んでしまえばなんでそれに価値があるか分からなくなってしまうようなもの。貨幣、国家、宗教、法律、みんなそうですよね。でも動物は目の前に見えるものしか信じない、というか理解できない?だからどこの文化にも神話ってあるけど、あれは人間に不可欠だったから、と言う事ができますね。

そして、農耕を始めた事により、多くの人口を賄えるようになった事もあり人類は爆発的に増え、世界中が小麦等の農作物や牛などの家畜だらけになり、一方で野生動物は絶滅に向かっていますが、種の保存で言うと、個体数が増えた人類や家畜たちが勝った、ということになりますが、野生で伸び伸びと生きる牛と、身動きも取れない牛舎で育ち次第殺されてしまう牛を比較して、もしくは現代人と、初期の狩猟民だったサピエンス(農耕民のように人口は増やせない)と、どちらが、個体の牛や人間として幸せだったのか?本書はそこにも再考を促していますし、人間が国家や宗教などをつくって来た過程で、多くの差別を伴い、黒人などが大きな犠牲となって来た事も考えあわせないといけません。
次に、「近代科学」について。上記の虚構たちは、宗教ひとつとっても、それも信じる者が違えば、宗教も違ったりするけど、科学は、万人に対して合理的でなければならないので、分からない事は分からないと言わざるを得ないけど、その分からない事を減らす事で(E=mc²を発見する事で)技術を進歩(原爆をつくって)させてきたけど、その技術も信用(投資)によって飛躍的に延びた(アップルにも出資者が居なければ今はない)し、僕らもその技術を思いっきり享受して生きているけど、一体幸せになったのか?そして、技術的には人間を改造してとんでもない能力を持たせたり、老化を止めたりもできるようになるんだろうし、それはある種、神の領域だけど、「自分が何を望んでいるかもわからない、不満で無責任な神々ほど危険なものがあるだろうか?」」と結ばれています。
そして、何を望むか?を知るためにも、冒頭の歴史の定義のように、歴史を知らなければならないのだと、思います。

是非、本書を義務教育で読ませて欲しい。そうすれば「危険な神々」になることを避けられるかもしれません。