アルネ・ヤコブセン

  • 2007.12.22
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芸術新潮で、デンマークの建築家、というか家具などのデザインで有名な、アルネ・ヤコブセンがとりあげられていました。
私は、ヤコブセンの事務所にいた事もある、ハンス・ウェグナーの家具が、とても優しい中にも強さや適度な緊張感があり好きなのですが、一方のヤコブセンの家具は、とても格好いいのですが、どこか冷たく、素材や心地よさよりも、形態に重きを置いているところに何となく拒否感がありました。
もちろんもっと広い比較では、北欧のシンプルさや、時代を超えても新しく感じられる感性、といった意味ではヤコブセンのデザインも好きな部類には入ります。
ヤコブセンはとても多くの、そして大きな仕事や、とても多く売れた家具などのデザインもして、またとても多くのスタッフを使っていたそうです。(とても人使いが荒かったそうですが)
私もそれなりに大きな設計事務所で修行し、そして自分で事務所を初めていろいろ考えて来た中で、やはり、多くのスタッフを使い、大きな仕事を始めると、どうしても、生身の人間との距離が、デザインの中にうまれて来てしまいますし、逆に言うと、それだからこそ大きな仕事に取り組めるとも言えます。
一方で、少ない人数で、そして出来るだけ自分の手を動かして、住宅や小さいものと向き合う事により、生身の人間と向き合ったデザインをうみだす事が出来る反面、やはり、余り大きな仕事に取り組むには不向きになってしまう面もあります。
ただ、ヤコブセンと同時代の、もっと無機質で冷たい「モダンデザイン」と比較すると、ヤコブセンのデザインに優しさを感じる事ができるのは、ヤコブセンがとても植物を愛していたというような以外と素朴な感性の持ち主だったであろう事や、デンマークという、少しモダニズムの震源地から遠かった場所でデザインをしたこと、によるのかもしれません。
生まれ来るデザインと、そのデザイナーがどんな環境に置かれていたかはとても密接なものですが、家具のデザインは、良いものは時代を超えて使い続けられ、愛される、という意味で、建築とはまた違った側面をもちます。
コルビュジェやミース、ライトも建築を軸足に家具も沢山デザインしてきました。
私も、造作家具はいつもデザインしていますが、いつか、椅子やテーブルのデザインも、本腰を入れて取り組みたいと思っています。