長谷守保建築計画

天災と日本人


「天災は忘れた頃にやってくる」というのは直接寺田寅彦が記した言葉ではないようですが、その趣旨の言葉は繰り返して来たようで、寺田の言葉をもっときちんと受け止めておれば東日本大震災での被害も随分減っていたはずなのに、という感じで震災後時々見聞きする書でした。
でも、大切なのは何故「忘れた頃」というが、恐ろしい痛い目に遭ってもいつしか忘れてしまう国民性なのか?という点であり、本書はその点についてなかなか考えさせてくれ、原発の再稼働や節電やで揺れている今こそ読んでみると良いかなと思いました。
昭和10年頃、つまり80年近くも前に書かれたけれど「科学者の目から見れば実に話にもならぬほど明白な事柄が最高級な為政者にどうしても通ぜず分からないために国家が非常な損をしまた危険を冒していると思われる」なんて、その頃から変わっちゃいないんだなあと思わされましたが、今の原発ー節電の混乱の原因はそこにこそありますよね。
ただ何故そうなったかというと、日本は地震や台風といった自然の超越的な力の前で「服従」する事を自然と身に付けてきて、一方でそのような災害までない西洋は自然を「克服」する合理的な「科学」を育んだけれど、それを形式的に輸入した日本人は身にしみた自然観を変える事もできずつまり科学を上手に使う事ができない、、とそんなところです。
教育について「いわゆる理科教育が妙な型にはいって分かりやすいことをわざわざ分かりにくく、面白い事をわざわざ鹿爪らしく(堅苦しく)教えているのではないかという気がする。子供に固有な鋭い直感の力を利用しないで頭の悪い大人に適合する様な教案ばかりを練りすぎるのでないかと思われる」というのはその通りだと思うし、もともと自然に対する特異な感受性を持っていた日本人、つまり感性で生きるタイプの人間につまらぬ理屈を叩き込んで、感性でも論理でも判断できない中途半端な人間に育ててしまった、という状況にも似ているのではないでしょうか。
でもやっぱり、何でもそうだと思うけど、こんがらがった状況を正常化するにはまず教育から見直してやり直さないと小手先の対応になってしまうと思うし、だから、上記にあるような意味で、感性と論理を上手く結びつけた教育というのが今こそ必要なんじゃないかと思います。
僕は暗記ものとか苦手でしたが、自分なりに理屈が分からないと前には進み無くない性格だったようで、不器用で回り道だったかもしれないけれど、今はそれで良かったかなと思ったりもしています。言葉を変えると「何故何故??」という子供的な質問にきちんと答えられる大人が増えないとやっぱり良くないんじゃないかと思っています。

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On 5月 21, 2012
by hase
in みるーよむーかんがえる

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